中間にある揚水ポンプのタイムスイッチを6時15分にしていたから、俺は6時から6時10分ころに井戸のポンプを始動させなければならなかった。でも、その時間は未だ暗く、灯りのほとんど無い牛舎では、仕事にならないのだ。そこで、日の短い冬のために、タイムスイッチが入るのを、7時に設定した。ちょっとは、寝坊できるかな?
 哺乳ロボット小屋に行ったら、なんとつむぎはたった一度ロボットを教えただけで、ちゃんと自分で飲めるようになっていた。これって天才かな?役牛時代なら、頭の良い子牛は重宝されただろうに・・・。あとの二頭にロボットの乳首を教えて、ミルクを飲み終わったらエサも与えた。
 こういう作業をしているとき、みそらはいつも俺の側に立っていて、頭を撫でてやると、嬉しそうに首をすくめる。こういう人懐っこさは、ふるえるほど嬉しい。
 見回りに行って、出産予定日が迫ったモトツボクミコを連れ帰る必要があった。
 スタンチョンが無い湾放牧地で、ロープを首にかけられたクミコは、他の牛のように走って逃げるのでは無く、そのままエサを食べ続けた。落ち着きすぎ。鼻輪も着けていないので、持って行ったもくしを顔に着け、引いて帰った。
 モトツボクミコは、北海道からわざわざ連れてきた若牛で、とても可愛がって育てた。だから従順なのは解るのだが、同じように育てたハルカは、興奮しやすく扱いにくい。生まれ持った素質というのは、なかなか変えられないのかな?
 船が入り、車検が終わった軽トラが帰ってきた。他に、ラーメンだの梨だの犬のエサと抗生物質、それから白菜やネギなどが届いていた。久しぶりの船なので、荷物がとても多かった。

 晩飯を食う暇も無く、たけんこ学級という学習会で、合唱の練習をした。11月1日に文化祭があり、参加することになっているらしい。
 俺は、声を出す所ではちゃんと出すのが好きだ。恥ずかしがって声を出さない方が、余計にみっともないのを、教員時代に沢山見てきたから・・・。
 久しぶりに大声で歌って、気持ちよかった。