フレッシュな骨

 期待と不安を抑えつつ、滑る道を牛舎に向かった。
 キサラギは、とても腹を空かせていた。他の牛達に水をやりつつ、声をかけて気持を前向きにさせておいた。
 いざ、ミルクを作って部屋に・・・。
 元九郎も飲むのが下手くそで、いつも苦労していたのだが、今朝は哺乳瓶ホルダーから一人で飲んでくれた。
 その隙に、キサラギの口に乳首をくわえさせる。空腹の彼女は、前に前に突き進んでくるのだが、数回吸ったら全然口を動かさなくなった。一旦口から放し再度挑戦すると、また数口吸って止める。
 うぅぅぅ。何なんだこいつは(-_-;) そのうち、自分のミルクを飲み終えた元九郎がやって来て、俺の股間を突き始めた。邪魔だ!
 結局、ほとんど飲んでいない。
 ミルクは他の子牛に与え、気を取り直して他の朝牛舎作業をした。作業後、1/3のミルクを作り、再チャレンジした。作業中腹が減ったと訴え続けていたキサラギは、気持が盛り上がって吸う気満々。それでも、苦労しながら何とか飲めた。ふぅ。
 自分の朝飯を終え、糞出しに行く。お昼直前の帰りしな、もう一度1/3のミルクを作り、キサラギにやった。今度は、先ほどより早く飲めた。

 ゴロウが、フレッシュな骨をしゃぶっていた。意外に太い。
 心配になって、妊娠牛放牧地に牧草を運び、頭数を数えた。病気をして死んだ牛がいるのかと思ったのだ。俺は、算数が苦手で、何度も数え直した。大丈夫、たぶん全部いる。
 でも、何の骨なんだろう?
 流産した子牛の可能性も考えたが、月末出産のメロンの次は6月なので、あんな立派な骨があるはず無い。鹿かな〜?

 運送屋さんが来たのだが、氷で動けなくなってしまった。助けを求められたが、前も後ろも雪の壁に接していた。ワイヤーも持っていないそうだし・・・。
 倉庫から、一番マシな(でも切れかかっている)ワイヤーを探し出し、始めはハイラックスで引っ張った。トラックが道を完全に塞いでいるので、引きたい方向に行けないのだ。でも、トラックを横滑りさせて引き上げる牽引力は、スタッドレスには無かった。
 仕方ないので、牛舎に置いてあったトラクターを持ってきて、今度は下方向に牽引し、横滑りさせた。トラクターはラグタイヤなので、氷の斜面では心許ないグリップなのだが、車重で引きずり、トラックの向きを変えさせることが出来た。やれやれ。

 夜牛舎だ。
 お昼にミルクを飲んでいるので、通常より腹は減っていないと思うが、挑戦してみた。すると、10分ほどかけてだいたい飲めた。これだけ飲めれば良いかな。
 ゴロウ達は、晩飯を欲しがらなかった。いったい何の肉を食べたのだろうか?明日、調査してみよう。