お産の近づいたのぼるを、牛舎に連れ帰った。
 離れた放牧地との移動を、トレーラーを使わずに手で引くのは、将来を考えてのことだ。今は力もあるし体も動くけれど、若い頃に無理をさせすぎた体は、あっちこっちに故障があるし、痛みもある。だから、今のうちに扱いやすい牛に育てておかないと、やがては扱えなくなるのだ。北海道から連れてきた牛は、全員馬並みに扱いやすいけど、この島の牛に怪我をさせられて以来、ずっと一貫してそういう扱いをしてきた。だから、今残っている牛は、たいてい扱いやすい牛ばかりだ。