咲耶姫誕生!

 おりひめ(百合茂産子)は、七夕に産まれたので着けた名前なのだけど、なかなか妊娠せずこれで最後と決めた種付けで、やっと妊娠した牛だ。着かなかったら、出荷されていた。
 そのおりひめ最初のお産が始まった。妊娠が遅れた分、おりひめはとても大きく育っての初産だけど、午前中から陣痛が始まっていたのに、一次破水は三時過ぎ、前足が出てきたのは八時を回っていた。
 今日はK君が休みだったので、俺は一人で作業をしながら、お産の進行を見守っていた。異常産なら、すぐに助産に入れるつもりで・・・。そして、やっと前足が出て顔も見えたので、助産に入った。
 おりひめをつないで、内診してみたら、前足の管が細い! 雌である。産科チェーンを前足にかけて、ハンドルを取り付けて、全体重をかけて引っ張った。雌なら、滑車は必要無いかと思って・・・。力まかせに一気に引っ張り出すのではなく、産道の広がりを感じながら、ずりっずりっと引き出し、頭が出てからは体重で落ちるのを受け止めつつ、自然に任せた。
 出てきたのは、雌にしては大きな子牛だった。名前は、悩んだのだけど『さくや』(華春福産子)。木花咲耶姫から取ったのだけど、気張り過ぎって言われた。自分の娘に着けたいような名前だって・・・。
 咲耶は、これから我が牧場をになう重要な牛なので、安産の神である咲耶姫にあやかったのである。頼むよ! さくや♪