親諸子

島の行事の中で、親諸子の行事が、俺にとっては一番重要に思っている(^^ゞ その前にある柱松建ては、K君が参加したいということだったので、俺は牧場の仕事をした。仕事をしながらも、気持ちは海に向かっていた。
 今年は、海にも行き慣れていて、体調がこれまでで一番良い! 
 仕事を終えて、柱松の所に行ったら、ちょうど立て終わるところだった。今年の親諸子のことを聞いたら、釣り組は船を出すけど、突きン棒組みは銘々勝手に行くようにとのことだった。船は出ないってことだ。
 Y君とK君に声をかけて、カヌーで平瀬まで出かけることにした。
 平瀬は、潮流がキツイので、二人とも俺から絶対に離れないように約束してもらった。三人乗りのシットオントップカヌーも、男三人いれば軽々と荷台に乗せることが出来る。坂本温泉から出発した。
 このカヌーは、俺がお客さんが来たときに乗せるつもりで購入した。お客さんとは、牧場体験に来る人達で、たいてい女性である。一人または二人のお客さんを乗せて漕ぐと、何とも良い匂いがするのだけど、今日俺の前に乗っているのは、肉体労働の二人だ。臭ってくるのは汗の臭い(^_^;) あまりロマンチックな気持ちにはなれなかった。
 でも、ホークを乗せて漕いだときは、40分かかった行程を、30分で漕ぎきった。
 
 早速海に入る。平瀬の海の中は、とても綺麗だった。ちょっと泳ぐと、水深8mくらいのところに、茶褐色に見えるハタがいた。俺は、潜ると自動的に耳抜きが出来るなので、一気に潜ってちょっと様子を見る。追いかけたって、泳ぐのはあちらの方が上手なので追いつけない。だから、好奇心をくすぐって見に来させるのだ。
 スジアラというハタを仕留め、とりあえずノルマは達成かな? 平瀬の周りを泳ぎながら、二人の様子をうかがう。ちゃんと着いてきている。K君は、おじさんという魚を突いていた。
 巨大なロウニンアジが見えたので、そちらに行こうとしたら、あっという間に流された。潮流の流心を避けながら、岩に戻る。二人にも、岩から離れないように伝えた。
 流れのきついところを、岩にしがみついて乗り越え、メジナや回遊魚が多いポイントに移動した。メジナ突きの専門家がいるので、俺は積極的には突かない。ユカタハタとスジアラを、更に一匹ずつ捕ったので、これ以上はハタは突かない! 回遊しているツムブリを仕留め、俺の役目はこれでお終い。
 K君はメジナを、Y君は生まれて初めてブダイを突いた。キープするエラ通しを持っていなかったY君は、厭がる俺を無視して、俺の腰にブダイを着けた。すでに重くて泳ぎにくいし、ブダイで汚されたくなかったのだけど・・・。
 クーラーボックスを持ってこなかったので、獲物に海水をかけながら漕いだ。まぁ、俺が休まず漕いで舵を取り、二人は交代で漕ぐのだけど・・・。
 親諸子の会場に行って、魚を渡そうとしたら、『釣りで沢山獲物があったから、別に入らない。』と言われ、必要とされていないのなら、他に欲しい人に分けた方が良いと思い、お盆では無く明日以降に食べてくださいと言って貰っていただいた。