穴を掘る

 朝一番で、俺は穴を掘った。表面をホイルローダーで削り、後はスコップで少しずつ掘った。
 手のひらに乗るチビの頃から飼っているから、俺はそんなに大きいという認識が無いのだけど、250kgくらいはあるのかな? 大きめに掘ったつもりの穴は、長さも幅も深さも足りなかった。堀直す。
 滝のような汗とはこのことだ。半袖のつなぎが、絞れるほど汗で濡れてしまった。K君も呼んで、手を合わせる。楽しい思い出を、ありがとうローズ。
 
 船で、揚水ポンプの基盤を直す電気屋さんがやってきた。可哀想に、汗だくになって、携帯電話が濡れて壊れてしまっていた。俺も、携帯を汗で壊した事があるので、それ以来携帯は防水にしている。
 故障の原因は、タイマーから信号を送る線が、ネズミに噛みきられたためだった。線を替えれば済むのだけど、基板の信頼性も危うく、しかも使い難いということで、全然違うシステムを提案してくれた。
 俺が毎朝スイッチを入れている井戸のポンプに、15,000円程度のタイムスイッチを取り付け、時間が来たら勝手にスイッチが入る。中間ポンプは、水が満水になったらポンプが作動し、半分に減ったらスイッチが切れる。これなら、二つのポンプに連絡線が無くても連動可能で、空転してポンプを壊す事も無い。俺は、毎朝のスイッチから解放される。ときどき水の出しっ放しなどで、貯水タンクが空になったときも、井戸のポンプを手動で作動させるだけで、簡単に水を揚げることが出来る。
 これまでの苦労は、何だったのだろう? 現在の経済課長は、現場の声を聞く気が無いと言っていたけど、現場からの声を聞かないから、べらぼうに高くて使い難くてヒューマンエラーの起きやすいシステムを着けることに、判を押すハメになるのだ。
 
 獣医さんも来て、子牛のワクチン接種と、妊娠鑑定を・・・。これまで導入して以来、今までずっと妊娠しなかったおりひめが、とうとう妊娠した。妊娠していなかったら、返納しようと思っていた矢先だ。同じ時期に導入したなつしげは、昨日発情して種付けしたのだけど、子宮内が汚濁しているようなので、抗生物質で消毒しようとしたけど、獣医さんの腕を持ってしても、器具を通せなかった。駄目だな!