手術

 昨日に引き続いて、色気を出してしまった俺なのだが、そのおかげで後悔するハメに・・・。
 
 いろいろやらなければならない事が溜まっていくと、俺は思考停止に陥りやすい。だから、何か一つでも減らして、心を軽く出来ないかいつも考えている。
 今日は、冬の間に出来なかった除角をしようと思った。
 除角は、出来るなら種付け前に済ませておきたい。妊娠している牛を除角して、流産させてしまったら大損害だ。ふじつぼとゆめは、春先に除角出来た。だけど、なずな、いろは、まことは、あの日暗くなってしまったから出来なかった。その後、何となく出来ないでグズグズしていたのだ。
 麻酔薬も除角するカッターもある。止血用の焼きごてもある。
 と言うことで、やることにした。
 俺の麻酔薬は、ちょっと効き目が穏やかで、完全な昏睡状態にはならない。だから、しっかりしばった状態で作業しなければならない。
 静脈に注射して、朦朧としたところで、まず鼻輪を取り付ける。そして、角の根元を止血ゴムで縛り、塩ビパイプ用のパイプカッターを使って、シャキッと切り落とす。そして、焼きごてで傷口をしっかり焼く。
 難しいのは、静脈注射をするとき、牛が体を捻って暴れ、せっかく入った針が抜けて、注射できないことだ。
 なずなもいろはも、素直に捕まり、注射を受けて意識朦朧としている間に、除角作業も止血も終わった。麻酔を醒ます薬も静脈注射して、いろはは痛いと怒っていた。
 まことは暴れて、なかなか静脈注射出来なかった。だから、しっかり縛ろうとロープを結び直していたら、隣の部屋にいたふじつぼがいたずらをして、ロープの輪っかに足を突っ込み、驚いて大暴れしはじめた。
 誰か居れば、問題なかったのだけど、一人なので、片方はまことを縛っていて、もう片方はふじつぼの足に絡まっている。そして、俺の身体を巻いていた。引っ張られると、俺のからだが締まる。女性だったら、身体に縄のあとが着いて締まったと思うけど、何とかふじつぼをなだめて、落ち着かせて、足を持って外してやることが出来た。やれやれと思って作業したのだけど、あとで見てみたら、スマホの液晶が割れていた。身体を巻かれたときに、スマホも巻かれていたのだ。あの力で巻かれたら、割れるわな・・・。
 頑張ろうって思ったことで、こういう失敗をする。北海道時代は、しょっちゅうあった事だ。けっこうガッカリするけどね!
 
 夜、猫の去勢手術をした。
 雄同士でマウンティングしていて、かなり欲求不満だったようだし、マーキングをされる恐れもあった。
 獣医さんに依頼したら、小動物は判りません!って断られてしまった。小動物は、デリケートなのだ。
 バリケードな俺は、農業用猫の去勢手術を、これまで何頭もした経験があるので、やってみた。