異常産メール

 朝、グズグズしていたら、ユンボを借りてきて欲しいと、メールがあった。アヤが、死んでしまったのだ。
 とても悲しいけど、この死を無駄にしたくない。次に子宮脱の牛が出たら、絶対に救うぞ!
 ユンボを借りに行き、バケットの交換をした。
 開拓用の爪を外すのに、20分。バケットを着けるのに、30分がかかった。前回より、かなり早くなった!
 アヤの亡骸は、ホイルローダーで運び、イタリアンライグラスの畑に、穴を空けて埋葬した。
 昨日、K君が一生懸命埋葬してくれた子牛だけど、どうしても母親と一緒に埋葬してあげたかったので、掘り出して寄り添うように埋めた。
 アヤには、特別な感情があったけど、どの牛を亡くしても、埋葬はとても悲しい。

 いつまでも悲しんでいるのは、誰のためにもならない。
 気分を変えるために、K君とY君を呼んで、食事をすることになった。せっかくなので、新しい地域興し協力隊員も呼ぶことになった。
 俺は、部屋に掃除機をかけ、採草地にボタンボウフウを採りに行った。
 四国から取り寄せた生うどんと、ボタンボウフウの天ぷら。鶏肉と大根の煮物をつまみに、若い者達が明るく騒いでくれたので、俺はとても救われた。
 天ぷらうどんのつもりで出したのに、うどんがゆであがる前に、天ぷらはどんどん無くなってしまったのが、嬉しくもあり、悲しくもあった。
 K君とY君は、とても仲が良く、K君はY君の足を撫でていた。気持ち悪いなと思っていたら、カイトと間違えていたと言うのだ。撫でられていたY君は、カイトが触っているのかと思って、黙っていたとか・・・(^_^;)
 なにも知らないカイトは、俺の足下で眠っていた。

 みんなが帰り、風呂から上がったところで、異常産の警報メールが届いた。黄38やすひらしげからの、SOSメールだ! 体温が、10時頃から急激に上昇し、41℃を超えていた。
 これは、難産で苦しんでいる時のパターンだ!
 大急ぎで着替えて、牛舎に行った。
 やすひらしげは、牛舎内をうろつき廻っていた。とても落ち着きが無く、なかなか捕まらなかった。
 枠場に入れて、内診した。すると、まだ頚管は人差し指一本分しか開いていないのに、頭が出口まで来ていた。
「前足が無い!」
 2日連続で、死なせるわけにはいかない! 頚管が開いていないって事は、まだ生まれるべきでは無い。頭を押し戻して、しばらく固定していたら、前足が前に出てきた! 痛みも治まったように見えたので、もう一度センサーを入れ直し、様子を見ることにした。部屋に戻したら、餌を食べ始めた。たぶん、これなら大丈夫だ。