ようこそ硫黄島へ

 5時前に、良い匂いがして目が覚めた。U爺が、早朝に出発する俺たちのために、朝食を用意してくれたのだ。自家製のパンに、目玉焼き、サラダ、薩摩揚げ・・・。ありがとう!
 明けゆく磯の風景を楽しみ、6時に出発! 鹿児島直行の道を覚えているか不安だったが、谷山までは順調にたどり着いた。最後にちょっと迷って、中山方向に行ってしまったけど・・・。
 二四時間営業のスーパーに行き、食材を仕入れる。和牛の焼き肉をしたかったのだけど、棚には和牛は無かった。
 南埠頭の、フェリーみしま受付に行く。生鮮食料は、冷蔵庫に預ける。
 荷物を預け、犬や猫は車に乗せて、船に積み込んだ。出航まで時間が合ったから、ドルフィンポート前の公園を散歩し、水族館前の水路に泳ぐマンボウを見に行った。
 
 出航する船のデッキから、桜島鹿児島市街を見つめながら、彼女は自らの大胆な決断に、驚いていた。俺も驚いていたけど、そそのかしたのは俺らしい(^^ゞ でも、俺は素直に愛情を表現しただけなのだけれど・・・。全力で応えてくれて、ありがとう!
 錦江湾を出てから、船はちょっと揺れ、少し酔ったらしい。すぐに竹島について、落ち着いたそうだ。
 いよいよ硫黄島が見えてきて、煙を噴く硫黄岳や、波間から飛び出すトビウオを見ながら、『本当に来ちゃったね〜!』って言っていた。これまでの人生で築き上げてきたキャリアを全て捨て、身一つで飛び込む決心なんて、並大抵の事では無い。
「あなたと別れたくないと思ったら、全てを捨てるしか無いんだもん! 他に選択肢が無いでしょ?」
その気持ちに、俺も全力で応えなければならないと思った。
 硫黄島に着いた。彼女が船を下りるとき、お姫様だっこで降りる計画だったのだけど、車を下ろしている間に、係の人に促されて、自分の足で降りてしまっていた。残念・・・ちょっとだけ、ホッとした(^^ゞ
 夜は、K君やY夫妻を呼んで、食事会をした。メニューは、直火焼き肉とハタハタの焼き物、枝豆ガンモ、新タマネギのスライス。俺は、もっぱら聞き役に徹した。