除角

 今日の船に、母牛登録の人が乗っていて、俺はなずなを母牛登録できるか?検査してもらうことになっていた。母牛登録できないなら、出荷するしか無いのだ! 港で検査を受けられれば、わざわざ鹿児島につれていく必要が無いから、なずなの体力も、俺の財布も、負担が軽くなる。
 いざというとき、動かないのが俺のフォードだ。時間にゆとりを持って、バッテリーのチェックとトレーラーの取り付けをしておく。直前で、焦るのはあまり好きでは無いのだ。
 なずなは、部屋に入ると自分から寄ってきて、簡単に捕まった。ロープにも、あまり抵抗なく引かれる。だけど、トレーラーのスロープは、簡単は登らなかった。
 
 船がやってきて、検査の人が降りてきた。なずなは、トレーラーの上で、ちょっと不安そうな顔をしている。
 検査の人は、なずなの乳房を調べながら、ちょっと難しそうな顔をしている。いろいろ問題はあるらしいけど、登録は問題なく出来るということだった。良かったね!なずな。
 

 獣医さんもやってきて、まずはワクチン接種だった。
 その後、ルーティンワークをちょこっと進めておいてから、除角の手伝いに行った。
 北海道にいた頃は、除角の時に麻酔なんてかけなかった。止血もせず、焼きごても使わない。だから、除角の時は、あたり一面血に染まり、人も牛も血まみれだった。
 去勢では一言も声を出さない牛が、除角では絶叫する。だから、自分の牛を除角するとき、俺は変装してみたが、牛にはバレバレだった。記憶の良い牛の場合、俺が切ったと解ると、逃げるようになるヤツが居るからだ。
 変装が効果無いということで、角切りは角切り隊の皆さんにお願いしていた。
 島に来てからは、自分で切らなければならなくなったので、麻酔を使うようになった。角の根元を縛れば、噴水のような血しぶきが飛ばないことも解ったし・・・。
 だから、今日の除角はとてもスマートに出来た。