帰島

 5時頃、駆けつけ通報メールが届いた。しげこのお産が始まったのだ。俺が帰り着くまでに、生まれていると思っていた。
 今回の帰島は、一人では無かった。これまでに3回も来てもらった人だけど、未だに明確な回答を得られない自分が不甲斐ないのだ。今回は、滞っている書類整理を手伝ってもらうために、来てもらうことになった。
 
 島に着いて、車を取りに行って、軽トラを運転してもらおうと思ったら、窓の外からエンジンをかけて、ギアを入れて止まっていた軽トラは、そんまま藪に突っ込んでしまった!
 
 おしげのお産は、あまり進んでいなかった。一次破水してから、二次破水するまでに7時間も経っていた。胎児がよほど大きいのだろうか?
 港に上陸してすぐに、牧場に行って内診してみたら、とても細い脚が確認できた。滑車を使って引っ張る助産を研修したいK君のために、一応産科テープを足に引っかけ、滑車を準備した。
 軽〜く引っ張ってもらったら、子牛はぺろっと出てきた。足の感触から、絶対に雌だと思っていたけど、出てきたのは小さな雄だった。
 しばらく様子を診たけど、立ち上がれなかったから、人工初乳を用意して、まずほ乳瓶で飲ませようとした。だが、ほんの数口吸っただけで、飲まなかった。仕方なく、ストマックチューブに切り替えた。ところが、喉が細いようで、全然入れることが出来なかった。これ以上無理すると、喉を傷つけてしまう。親に吸い付く事を期待しつつ、他の作業を進め、帰ってしまった。