血と汗と油

 若い頃、俺は代謝が高くて、いくら食べても太らなかった。
 大学時代は、いつもお腹を空かせていて、栄養失調になったくらいだったけど、働くようになってからは、沢山食べられるようになった。一人で水炊きとか作って、鶏肉500gとか白菜半分とか使って、米も二合炊いて、全部食べてしまったり・・・。でも、モトクロスとか登山とかしていて、全然太らなかった。
 太るようになったのは、大腿骨骨折して、3ヶ月も入院した為に、筋肉が衰えてしまった為だ。筋肉の量が減ると、代謝が下がってしまうのだ。特に、40も後半になって、良い物を沢山食べると、さすがに太るようになった。
 最近は、気力を維持し続ける為に、好きな物を好きなだけ好きなときに食べている。気力が途切れたら、仕事を続けられないから・・・。
 でも、『痩せたんじゃないか?』と言われることが多い。そういえば、腹もすっきりしたような・・・。沢山働いて、エネルギーを沢山消費しているのかな?
 
 最近、痛い目にばかり遭っているような気がする。
 子牛が鼻を垂らしていたら、とりあえずマイシリンを注射するのだが、他の作業との合間に大急ぎでやる為、いちいち注射器を処理しに行く暇がない。また、歩きすぎて膝が痛いから、あまり歩きたくないのもある。
 注射器を胸ポケットに入れたまま、忘れて牛を繋いだり餌をやったり発情観察したり・・・。お産が近い牛に、子牛の下痢対策のワクチンを打つ為に、胸ポケットに手を突っ込んだ。ワクチンのアンプルは、胸ポケットの底に入っていたから、勢いよく突っ込んだら、火がつくような痛みが走った。
 注射針のカバーが取れていて、18ゲージの太い針が、小指の爪と肉の合間に深々と刺さった。
「△×□◎※」
 想像にお任せしよう! よい子は、決して真似しないように!
 機械の修理をしている。組み立てるとき、たたき込むような部品が錆びていると、それを外す作業は、ひたすら打撃系だったりする。それも、不自然な体制で、狭い所で、かなりの力を入れなければならない・・・。狙いを外すと、たいてい指のあっちこっちの皮膚が裂けて、血が滴る。
 農業って、血と汗と油にまみれてする仕事だったりするのだ。
 
 整備が下手なだけという意見もあるけど・・・。
 
 九月踊りというのがあった。5時から始まるのだが、5時は牧場としては最も忙しい時間だ。手のかかる子牛もいて、とても終わらないはずだったけど、たぶん島の人との関係を尊重するなら、万難を排して見に行くべきだ。
 多少省略しないと、行けるはずないんだけど、何とか5時には間に合わせた。