ブツブツ

 今日は、飲んでくれるのだろうか?
 何時間もかけて飲ませている間、全く飲んでいないわけでは無いらしい。口に流れ込んだミルクを、ときどきすすっている音が聞こえるし、こぼれてくるミルクは、ほ乳瓶の容量から比べると少ない。だから、三日も持つのだろうし、配合飼料(スターターとか人工乳とも言う)を食べてもいるから、全くの絶食ではない。それでも、連日一頭の子牛に、こんなに時間をかけるゆとりは無い。
 今日は、拒絶よりちょっとすすっていることが多くなった。空腹と乾きの為、飲み込む量が増えているようだ。だが、そうやって飲むくらいなら、なぜ舌で乳首を押し出したり、体をねじって飲めない体制になろうとするのだろう? 普通は、一口飲み込んで飲み物(ミルク)と認識したら、そのままごくごく飲んでしまうものだから・・・。ものすごく、神経質で頑固なのかも知れない。
 ストマックチューブに切り替えるのも、一つの手だ。以前、虚弱で生まれ、舌がちょっと奇形気味だった子牛を、しばらくストマックチューブで飲ませ続けた事がある。その子は、成長と共に機能が回復して、二週間くらいでほ乳瓶に吸い付けるようになった。だが、久美次郎が同じように吸ってくれるという保証は無い。そのまま、ほ乳瓶を拒否し続け、離乳までストマックチューブで飲まさなければならないという可能性も、あり得る。
 全量で無くても、すすっているのだから、もうしばらく頑張ってみることにした。
 
 そんな中、見回りだってやっているし、臨月の緑2しげふく7を迎えにだって行った。
 ところが、妊娠牛が居る大浦放牧地には、二頭しか牛が居なかった。そして、居るはずの無い、4段張りの有刺鉄線の向こうに、牛の姿があった!
 来年入植する人の為に、新しい牧場を作る作業が行われており、これまでうちの牛が行っていた場所を、有刺鉄線で区切ったのだ。だが、仕切りは完成したと聞いていたのだが、どこかに仕切っていないところがあったのだろう。奥地に行ってみたら、海側の竹藪の中から、数頭の牛が出てきた。竹藪と道を区切っていた有刺鉄線は取り除かれているから、牛は好きなところから、深い竹藪の中に逃げ込める。
 これは、一人で追うのは無理だ。幸い、その一帯で使える水場には、柵で仕切られているから、うちの水場に帰ってくるしか無い状態だ。たぶん、明日の朝には水場前の柵に集まっているだろうから、そこで帰ってこさせた方が、全頭集めるには良さそうだ。でも、牛は一度ルートを覚えると、繰り返し行きたがるヤツが必ず居るんだ! そして、おもしろがって着いていくヤツも・・・。また仕事が増えた。
 
 最近、マニアスプレッダーの修理をしているけど、マニュアルが無いから、部品交換に苦労している。動力を伝えるシャフトを抜くのに、末端の歯車を全部外さないとならないなんて、なんて整備性の悪い機械だ!
 ブツブツ言いたい年頃なのだ!