10月セリ出荷

 5時半に起きて、準備を始めた。10月出荷の日だ。まず、出荷する6頭に餌を与え、それからルーティンワークを、出来るだけやった。
 今日船で帰ってしまうアルバイトが、出荷手伝いの為に来てくれた。
 出荷の牛達は、すでに朝の食事を終えたので、積み込み開始だ。
 一番手こずった潮次郎から始めた。さすがに、この牛はひとりで引っ張り出すことが出来なかった。でも、訓練前は徹底的に抵抗していた潮次郎だけど、ちょっと引っ張れば歩くようになっていたから、かなり時間が短縮された。
 難しいのは、トレーラーに乗る為の斜路だ。渾身の力を込めて、引っ張り上げた。秋になって、かなり涼しくなったから、汗だくになる事は無かったけど、腕はパンパンになった。
 他の牛達は、ロープを持って歩く俺の後ろを、素直について歩き、トレーラーに乗せるのも楽だった。時間をかけただけのことはある。買われていった先でも、素直な牛は喜んでもらえるかな?
 3頭ずつ2往復して、無事運び終えた。
 アルバイトを集落に送り返し、俺は遅めの朝食だ
 
 競りに上がる牛を、港で見送った。アルバイトも、同じ船に乗り、大学に戻っていった。また来てくれるかな?
 
 午後は、種付けが無かったから、ルーティンワークだけで済ませた。
 牧場から降りてくるとき、港に綺麗な潮が入っていた。日が暮れるし、波が高くなっていたけど、まだ間に合うだろうか?
 急いで支度して、カヌーを出した。暗い海に入るのはとても怖いのだが、日没直後の海には、テトラポットに隠れていた大物が出てくることが多い。チャンスは、ほんの数分だ。
 沖のテトラの手前で、水中を覗いてみたが、青く透き通って見えた海は、意外に濁っていた。光の量が足りず、透明度は2〜3m程度も無い。
 入ってすぐに、40〜50cm程度の小さなスズキの群れに会った。まだまだ子供だ。もっと大物がいるはずと思って探したが、俺の視界には表れなかった。恐らく、一尾仕留めると、あっという間に隠れていた魚が出てくるのだけど、俺の銛は仕留めてから次の発射が出来るまでに、時間がかかりすぎる。だから、最初の一撃はとても慎重になる。 
 メジナも沢山居たが、視界が暗すぎて狙いが定まらない。後10分ほど早く来ていれば、何とかなったかな? 次頑張れば良い。