ご褒美

 今日は、久しぶりにアルバイトの登場だ。
 何度も言うが、ルーティンワークだけなら、一人でも十分出来る仕事量だ。でも、それ以外の仕事をしないと、現状維持ばかりで牧場の仕事は前に進まない。
 今日は二人なので、ルーティンワークが半分になった分以上に、一人ではなかなか出来ない作業を敢行した。
 
 まずは、こたま、かぐら、勝巳太郎を、哺乳ロボット小屋に進級させた。ほ乳瓶で誘導したら、三頭とも素直に着いてきた。そのまま、哺乳ロボットにも吸い付かせた。
 哺乳ロボット小屋に入ると、まずなずなといろはがやってきて、頭を撫でろと催促する。なずなは、生まれたときから人懐っこいが、母親の愛情を受けられなかった反動だろうか? 初乳さえ飲ませてもらっていないけど、産室から自らの足で歩いて、電柱牛舎まで着いてきた。
 
 ギニアグラスの二番草ロールを、ユニックに積んで湾放牧地に行った。
 湾放牧地は、無機質な土がむき出しになっていて、去年までは裸地が多かった。
 これまで、堆肥を沢山入れて耕したらしいが、全部流れてしまって草も生えないらしい。せっかく平らな場所なので、勿体ないと思った俺は、去年、品質の悪いロールを置いて、牛に食い散らかせ、糞尿をかけさせて置いた。そうしたら、今年は裸地がほとんど無くなり、草がよく生えていた。
 蹄耕法の一種と言えるかな? 時間と牛の力を借りて、土地を肥えさせるのだ。
 今年も同じように置いてやれば、来年はもっと土が肥えるだろう。耕さないから、表土を流されることも無いと思う。
 
 灯台下に残っていたロールも、持ち帰った。
 
 今日は、種付けが三頭も居た。二頭着けたところで、時間が遅くなってしまったので、アルバイトを集落まで送っていった。
 
 牧場に引き返し、種付けして終わったのは、真っ暗になってからだった。
 こういう時、俺は自分にご褒美を与えることにしている。
 カナダで、単独川下りの旅をしているとき、荷物の中には桃の缶詰を入れてあった。これは、普段は絶対に手を着けない。そして、たとえば逆風が続いて、ヘトヘトになるまで漕いだり、転覆しそうになりながら、片手鍋で水をかき出して浮上させたり、熊に襲われたけど何とか無事だったり・・・。困難な状況で、よく頑張ったと自分が思ったとき、ご褒美として特別に食べていた。甘くて美味しかったなぁ! また頑張ろうと、力がわいてくるのを感じた。
 俺は、あまりストイックな性格ではないので、頑張った自分は、ときどき褒めてやらないと、続かないのだ。
 今日も頑張ったから、冷凍庫に在庫していたアイスの大箱を出して、たっぷり食べてしまった。たまには良いのだ!