削蹄

 今日もアルバイトが来てくれたので、小屋下放牧地の二頭を、黒島崎放牧地に二人で引いて行った。どちらも素直な牛で、楽々引けたのだけど、飛行場に着いたら、なぜかすずこが待っていた。すずこは、大浦に居た妊娠牛だから、春に直したばかりの金網を突破して、飛行場に侵入したようだ。
 牛を引いていれば、勝手に着いてくるかと期待したけど、あらぬ方向に歩き始めたので、俺が連れてきた二頭を引いておとりになり、アルバイトが、すずこの背後からプレッシャーをかけた。すると、トコトコ着いてきてくれたので、助かった。
 連れてきた二頭は、黒島崎放牧地に入れ、すずこは大浦放牧地に返した。
 近いうちに、金網の破れ目を探さないと、牛は一度脱走した穴は、修理しない限りすぐにまた使うのだ。
 
 大浦放牧地に行き、先日藪の中で出産した緑14いちこを、小屋下放牧地に連れ帰った。
 
 出荷牛の削蹄をした。
 毎月のことだけど、削蹄作業が一番体力を使う。以前に比べ、子牛が懐いているから、捕まえるところまでは簡単になった。でも、ロープで引っ張られ、それに従って歩くということは、教えないと出来ない事だ。
 普通、引っ張られると、引っ張られないように踏ん張ることが多い。もっと引っ張ると、四肢を突っ張り体重を後ろにかけて、てこでも動かなくなることもしばしばある。こうなったとき、一人の力で一歩を出させるのは、ほぼ不可能だ。牛と綱引きをしてはいけない。後ろに回って追ったりして、とにかく歩かせるものだ。
 頭数が多く、あまり時間がかけられない俺は、ホイルローダーで引き牛練習をする事がある。踏ん張るより、歩いた方が楽だと教える為だ。足腰を痛めないよう、ゆっくり引っ張る。牛によっては、最初の一歩目から気がつく者もいるが、何往復もしなければ気がつかない者もいる。今日の牛は、みんな頭が良かった。
 枠場に入れる。ここでも、また大汗をかく。狭い枠場には、入りたくないものだ。渾身の力で引っ張り、後ろから押してもらう。
 前足に、ロープをかけて引っ張るけど、足を踏ん張って決して曲げようとしない者もいる。無理矢理上げても、それを厭がってひっくり返る者もいる。ひっくり返ってしまったら、怪我をさせないよう、250kg以上ある子牛の足を引っ張ったり持ち上げたり・・・。
 俺にとって、削蹄は力仕事なのだ! 上手な人にとっては、そうではないかも?