鼻輪つけ

 アルバイトが来たときは、それ相応の仕事を用意している。
 ルーティンワークをさっさと終わらせ、湾放牧地にモトツボクミコを迎えに行った。
 間もなくお産のクミコは、アルバイトが引いて、牛舎まで連れ帰った。そして、子牛の下痢を抑えるワクチンを接種して、牛舎に入れた。
 
 出荷までにしなければならない仕事のうち、人手が欲しい仕事を優先させてやっている。
 うちでは、生まれた子牛には、片耳だけ耳票を着けて、育てている。特に幼少の頃、両耳に耳票を着けているより、耳票を何かに引っかけて耳を裂く事故を、半分に減らす為だ。片方が取れてしまったときは、すぐにもう一つの耳票を着けている。
 でも、哺乳ロボット小屋を卒業した後は、もう一方の耳票を着けても良いのに、雑事にかまけてそのまま育て、出荷直前に着けることが多い。とりあえず、電柱牛舎に戻した子牛は、全部耳票を取り付けた。
 出荷する牛達は、もくし(おもて)を着けて、耳票と鼻輪も装着した。
 今回の出荷は6頭だけど、3頭の雄がとても大きく、捕まえた子牛を押さえて保定するのは、かなり力が要った。顔を振られただけで、俺は軽く振り回されてしまう。けっこう力仕事なのだ。