台風前日

 チビ子牛部屋を見たら、かぐらもこたまも居た。
 かぐらは、俺を見た途端、走って逃げようとした。今朝は、この子にもミルクを飲ませなければならない。
 まず、逃げようとするかぐらを、必要以上に追いかけないで、あごを押さえて逃げにくい状態にする。ほ乳瓶の乳首をくわえさせ、ちょっとだけミルクを流し込み、食欲をわかせる。無理強いせず、こたまに哺乳する。すると、落ち着いて飲むこたまを見て、かぐらが落ち着いてちょっと近づいてきたりするのだ。
 こたまが飲み終わり、配合飼料を口の中に入れてやってから、かぐらに再度挑戦。今度は、わりとすぐに飲み始めてくれた。
 
 湾採草地で、雑草ロールが回収されずに残っていた。それを、湾放牧地の中に置いてやった。
 湾放牧地には、表土がむき出しで、雑草さえ生えない場所があった。堆肥を入れて耕しても、流されてしまうと聞いていた。それにしても、あまりに無機質な土だったので、去年品質の良くないロールを、10個ほど転がして食べさせた。湾の牛達は、ロールを転がして遊び、食い散らかし、糞をした。おかげで、裸地に雑草が生えた。これを毎年繰り返せば、やがて豊かな土になるかもしれない。
 農業は、機械力だけで無く、時間や牛の力も借りた方が良いときもある(と思う)。
 
 作業を終えたところで、雨雲が走ってくるのが見えた。と思ったら、猛烈な雨が降り出した。ミニローダーの簡易屋根では、ずぶ濡れになってしまった。
 濡れて帰ったら、雨は上がり、青空が見えた。今度は、軽トラで大浦放牧地に行った。緑14いちこが、血相を変えて娘を探していた。緑3ふくがいたので、軽トラで引いて帰った。お産が近いので、4WDの低速に落とし、歩くよりゆっくり引いて帰った。
 
 夕方、勝巳太郎を、超早期母子分離した。小屋で生まれた子は、のんびりしている。