パラダイスなポイント

 目的があると、人は頑張ったりする。
 アルバイトは、とても真面目である。言われた仕事は、とても丁寧にしてくれる。ホークが仕事を説明し、俺は他の作業に取りかかった。 
 採草地に、79個のロールが残っているが、乾草庫は牧草がビッチリ入っている。全部ラップして、外に置く方法もあるけど、一個あたり500円?くらいのラップフィルム代がかかる。それでも、大切な粗飼料として確保する価値のあるものだし、乾草庫を建てるより安いけど、当面の出費は出費である。
 だから、乾草庫内のロールのうち、切り草に使える良質なモノを、切り草小屋に移動させようと思っているのだ。一番最初に丸めた牧草ロールは、当初の心配を他所に、黴びること無く綺麗に仕上がった。それを、切り草小屋に移動できるだけ移動させてから、そこに草地のロールを運び込み、入りきれなかった分だけをラップしようかと思っている。
 子牛用の乾草だったら、こんなに悠長に構えていないのだけど、親牛用なのでそれほど神経質になる必要無いと思っている。
 北海道時代は、栄養価を落とす為に、わざわざ刈り遅れにしていたこともあった。親牛は、良い乾草をあげすぎると、太りすぎて不受胎になりやすいのだ。
と言うことで、移動作業を開始した。
 
 それとは別に、今日はとても波の無い静かな日だった。ホークからは、俺がパラダイスと呼ぶポイントに連れて行って欲しいと、頼まれていた。そこは、簡単に行ける所ではなく、泳ぎに自信が無い人は、近づけないところだ。
 でも、ホークは水泳部だったので、泳力には信頼性があり、今日はとても静かで潮流もあまり無い。昨日、書類をほとんど書いてもらって恩義もあるし、今から行けば休み時間内に帰ってこられそうだし・・・。
 と言うことで、おやつとお茶を持って、出かけたのであった。
 丘の上から見たら、視界に4〜7匹のウミガメが、息継ぎの為に浮上していた。たどり着くのに、40分もかかってしまった。
 そこは、まさに天国のような場所だった。
 まず、目に飛び込んだのは、水深7mくらいのところから、俺を見ているスジアラ(ハタの仲間)の姿だった。俺に、興味津々だ。
 とそこに・・・大型のツムブリの群れが通りかかった。4mの長い銛を持っているのは、回遊魚を捕る為だ。高速で泳ぐツムブリを、一尾仕留めた。暴れる暴れる! 今日は、魚のエラに通して確保する仕掛けを持っていたので、キープしてから、エラを取って血抜きをした。
 大型のハタは、二尾に増えていたが、近づこうとすると、深みにさりげなく逃げた。後ろから追いすがりながら、背中を突くのは好きでは無い。傷が大きくなるからだ。
 
 ホークは、俺の近くで浮かびながら、様々な種類の大きな魚が、信じられないくらい沢山泳いでいるのを、感動してみてくれていたようだった。
 40cmくらいのハタが、わりと沢山居た。来年、また会おうね(^_-)-☆ 40cmの魚は手頃なサイズだけど、ハタとしてはまだ子供だから、成長を待つべきと思っている。
 目移りして、何を取ろうか迷ってしまう。俺は、仲間と食べきる量しか取りたくないのだ。いずれも大型なので、取って良い数は限られている。
 
 大型のギンガメアジの群れに会った。高速で泳ぐし、チョロチョロ向きを変えながら、俺を観察している。
 かなり大型のモノを選んで、命中させた。ところが、銛先に取り付けた紐は、俺が作った仕掛けだったけど、初めて作った物だから強度が出ていなかったのかも知れない。魚が、岩に仕掛けを巻き付けて、一気に加速したら、固定してあった接着剤が取れて、魚が外れてしまった。一時呆然となる。
 せっかくここまで来て、ツムブリ一尾では帰れない。ナイフを取り出して、運良く回収した銛先に、紐を通して結びつけた。接着剤を使うやり方より、結び目は大きいけどほどけない結び方だ。
 結んでいる間に、俺が何をしているのか見に来ていたハタを、最初のターゲットに選んだ。ハタは、好奇心が強いので、警戒させなければ簡単に突けるのだ。
 
 まさに、獲物に不自由しない場所だった。ハタを二尾突、食べきれない量になってしまい、帰路についた。午後に仕事前に、シャワーを浴びたかったし・・・。
 
 午後の仕事は、ちょっときつかったけど、気持ちは晴れやかだから、頑張ったよ! ホークも、疲れただろうが、顔は嬉しそうだった。
 あんな数の回遊魚や地魚が乱舞するポイントは、ダイバーズショップでも、上級者しか連れて行かないだろうから、ホークはとても凄い体験をしたと思う。生き物好きだし・・・。
 
 夜は、ジャンベチームと合流し、魚パーティーだった。ハタとツムブリの刺身と、ハタの兜焼き、ハタの吸い物。
 ハタよりツムブリの方が人気があったのは、まだ新しすぎたからだ。身が固く、まだ味が無いのだ。食べ頃は、好みに寄るが、あすか明後日。
 明日も、一緒に食えるかな? ギンガメアジが食べたいと言っている人もいるが・・・