今朝は、プール当番になっていた。8時からだったので、とりあえず牧場に犬たちを連れて行ったが、
「牧場は良いから、早く行ってください。」
と促されたので、ミルクロボットの調整だけやって、プールに急いだ。
 プールを利用する人が居た場合、受付をして、安全を監視するのが役目だ。
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 誰も来なかった。
 台風の接近に伴い、強い風が吹いていた。晴天だったけど、午後から敷きワラ用の雑草をロールしようと思っていたら、激しいにわか雨が降って、俺を残念がらせた。
 
 それでも、強い日差しと強風で、雑草は乾いているようだったので、休み時間を返上して、ロールに行った。
 せっかくレーキしておいた雑草は、風で吹き荒らされていたけど、二番草の収穫の邪魔にならない程度に、拾い集めておいた。
 牛舎に帰って、異常に気がついた。
 予定日まで一週間のけいこの陰部から、何かが出ている。
「お産が始まっていたんだ。」
 早めの出産は、子牛が小さいから、安産が多い。ところが、近寄ってみたら、何か違う。慌てて部屋に入り、引っ張り出した。反応が無い。すぐに、心臓マッサージをして、マウス・トゥ・マウスの人工呼吸を試みた。すると、肺から多量の羊水が出てきた。続けたけど、子牛が息を吹き返すことは無かった。
 こんなに沢山の羊水を吐いたのは、始めて見た。何らかの原因で、へその緒が早めに切れてしまった為、子牛は呼吸しようと羊水を飲んでしまったようだ。立ち会っていれば、救えた命だと思うけど、牛温恵のセンサーを入れていなかった。脱落などがあるし、あまり早く入れたくないと言う意識が、予定日まで一週間前にセンサーを入れることを、ためらわせていた。センサーを入れていなければ、牛温恵を使っている意味が無い。
 けいこは、子牛の亡骸を綺麗に舐めていた。その姿を見ると、自分の犯したミスの重大さを、痛感させられる。ごめんなさい。