福子太郎誕生

 予報では、朝から雨のはずだった。意外に青空が出ていたのだけど、短時間、けっこう激しいにわか雨があった。
 牧草収穫の時期は、天気予報とニラメッコで、それでも外れるとそれまでの努力が無駄になり、疲労の大きな時期だ。出来るなら、この時期は牧草に専念したい。
 
 基本的に、牧草作業は一人でするので、あまり仕事の内容に理解を示してくれる人が少ない。
 この暑い時期なら、丸三日間日に当てて、テッターを豆にかけることが出来れば、乾草に仕上がり丸めることが出来る。その間に、雨に降られなければ、良い乾草が採れる。刈り取りをする為には、最低三日間の連続した晴れが必要なのだ。にわか雨の可能性があると言われると、とても刈り取りは出来ない。スケジュール通りになんか、出来たためしがない。
 
 北海道のチモシーやオチャードと比べ、チガヤは栄養価は半分程度しか無いらしい。でも、刈り遅れによる栄養価や食味の低下が少なく、その点はかなり楽である。
 北海道では、30ヘクタールの急斜面で採草していたから、一度に刈る面積は5〜8ヘクタールほどまとめて刈っていたけど、今は全部で7ヘクタールしか採草地が無いから、リスク分散の為に小面積で4回に分けて刈っている。
 作業速度は、チガヤが堅いからか?機械の調整が悪いからか? かなりゆっくりでないと刈り取ることが出来ない。
 良い乾草を仕上げることが出来ると、子牛の食いが良いから、翌年の売り上げアップになる。逆に、雨に当てた牧草を子牛にやらなければならない状況だと、子牛は乾草をほしがらなくなるから、腹が細い子牛になり、評価が下がる。
 牧草収穫作業に集中することは、一人では出来ないので、K君よろしくね!
 
 雨の予報だったが、意外に晴れたので、刈り倒してあった牧草に、連続三回のテッターをかけて、乾かした。さあ丸めようと思ったら、また雨が降るし、種付けが三頭もあるし、白74ふくこが産気づくし・・・。しかも、初産でとても難産していた。
 丸めに行けなかった。
 ふくこは、口から泡を吹いていた。内診してみたら、側体位で引っかかっていた。押し戻しつつ、足に産科テープを巻き付け、体位が戻るように加減しながら全体重をかけて引っ張った。出てきたのは、大きな雄だった。
 難産すると、母牛は子牛の世話が出来ないことが多い。ふくこは、子牛を舐めるどころか、立ち上がることも子牛を見ることも出来なかった。牧草収穫作業や種付けで圧迫されたルーティンワークの合間に、子牛のところに行って、敷きワラで体をこすってやり、立ち上がるのを促した。母親が舐めるとか人が体を楠ってやることで、子牛のからだが目覚めるのだ。人工初乳を作って飲ませ、へその緒を何度も消毒した。引っ張り出すときに、筒状の薄皮が取れてしまい、汚れやすいのだ。
 作業を終えて替える前に、もう一度見たら、ふくこが立って子牛を舐めていた。俺が体をこすった竹の時は、みすぼらしく汚れていたけど、毛並みが良くなりピカピカになっていた。