台風の日

 未明から、暴風圏内に入るから、警戒を厳にせよとのお達しだった。
 確かに雨は降っていたが、それほど大げさな感じでも無く、風も大したことなかった。いつも通りでかけた。
 崖の途中から見下ろした海は、確かに荒れているけど、それほど大騒ぎするような荒れ方でも無かった。種子島が、防波堤の役目を果たしてくれるので、三島海域は東からの風では荒れにくいのだ。
 
 牛舎に行ったら、哺乳ロボットのパドック小屋に、雨が降り込んでいた。ここは、開口部が広いのに、ひさしがとても短いのだ。今は、防風ネットを張ってあるが、風が強いと、それでは防げない。ひさしを伸ばしたり、開口部を狭くするなどの対策が必要だ。部屋が濡れてしまうと、子牛が風邪引いてしまう。これも、急ぎの仕事だ。
 
 いろいろやったが、雨が酷くて見回りに行ける状態では無かった。せっかくだから、勉強会をした。牧場の運営についても、共通理解が必要だ。
 初期の胃袋作りに関する考えや目標、今後の飼養管理に関して、特に留意する所などを、確認した。
 
 午後から、晴れた。
 発情観察の為に、放牧地を回った。
 今日は三人いるから、黒島崎放牧地にいて、連動スタンチョンに入らない赤7たらちねの捕獲作戦をたてていた。牛達を呼び、各人持ち場に着いた。
 枠場の無い黒島崎放牧地で捕まえるには、枠の外側で飛行場の金網との間の狭い所に追い込むのが一番だ。俺が餌をやって、K君が藪の側を守り、牧場長がバラ線を外していたら、ひめこがトコトコと外したバラ線柵を抜けて、エサ箱の方にやってきた。そして、たらちねも釣られて入ったので、興奮させないように気をつけながら、バラ線を張り直し、首にロープをかけて三人がかりで捕まえることが出来た。
 引っ張って帰ったけど、引き綱を弛ませて、俺の腰の所に顔をピッタリ着けて、なんの抵抗もせずに小屋下放牧地に帰ってきた。そして、ここのスタンチョンには問題なく入った。
 
 青16ふくしげに、種付けをした。頚管の穴が閉まって、なかなか通らなかったから、かなり発情後期だったと思う。