朽ち果てたフェンス

 うちの牧場の真ん中には、飛行場がある。放牧地と飛行場の境界は、古い金網で仕切られているが、これが朽ちて穴だらけである。脱走する度に、バラ線で応急処置をしているが、フェンスは村の資産であり、村の管理になっている。
 牛は、穴から竹藪に入り、編み目のような通路を作っていた。そして今日、その通路が滑走路側に通じてしまった。
 黒島崎放牧地に行くには、滑走路を横断しなければならない。滑走路脇の雑草を、4頭の牛が美味しそうに食んでいた。
「あちゃ〜!」
 4つの放牧地のどこから来たのだろうか?牧場長の診断によると、小屋下放牧地の牛達であった。
 脱走牛達は、黒島崎放牧地に呼び込み、小屋下放牧地との境界を調べてみた。数ヶ月前までは、かろうじて形を保っていたフェンスは、約300mに渡って、原形をとどめないほど朽ち果てていた。
 役場の人に相談してみたら、バラ線による応急処置を、人手を雇ってしてくれることになった。
 
 今日の船には、獣医さんが乗っていた。
 子牛に5種混合ワクチンを接種したり、異常産予防接種を打ったり・・・。
 ちょうど、いずみが発情していたので、卵巣の触り方を教えてもらい、俺の種付けでおかしいところをチェックしてもらった。どこにも、変なところが見当たらないそうなので、やはり直射日光の下で精液ストローを扱っていたのが、良くなかったのかもしれない。