馬たちの帰還

 島に帰る日だ。ポパイとソックスも、一緒の船で帰るから、7時半には港に行った。いつも買うミスタードーナツは、買えなかった。
 朝の忙しい時間なのに、友達は早起きして馬事公苑の馬たちに餌をやってから、ポパイとソックスを港に届けてくれた。
 蹄鉄をはいたポパイの蹄の音は、船に乗るために集まった人の注意を引いた。一番天井の高いコンテナに、ポパイとソックスを入れた。それでも、ポパイの耳は天井に触れていた。
 ポパイの悪癖として、イライラすると前足で地面を掻く(前掻き)。ダメだよと言うと、一時的に止めるけど、すぐに再開。少しでも気が紛れるように、後部甲板に置いてもらうようお願いした。航海中に見たけど、大人しく寝ていた。
 
 硫黄島に着いたら、急いで準備をして、馬たちが降りてくるのを待った。
 ポパイに馬装してまたがり、ソックスの引き綱を持った。手綱を左手で操作し、右手でソックスを引き、牧場に向かって皆が怖がらない程度の速歩で進んだ。ソックスは、ポパイにぴったり体を寄せ、引き綱を引く俺の手には、ほとんど力がかかることが無かった。
 
 彼らが留守の間に、秋に播種したイタリアンライグラスがすっかり伸びていて、牧草には困らない状態だった。それまで、一人でせっせと食べていたローズは、白47まさよに、なにやら不満を言っていたようだった。
 馬装を解いてやると、久しぶりの放牧地に駆けだし、チガヤのロールやイタリアンライグラスをむさぼり食っていた。