牛を扱う日


 冬山用の寝袋を使っていた茂吉は、朝方とても寒かったらしい。気がついたら、窓を開けっ放しだったらしい。それにしても、あの寝袋なら寒くないはずだと不思議に思っていたら、中に入って寝たのでは無く、掛け布団のように使っていたらしい。それは寒いかも?

 ローストチキンのおじやを食べた。茂吉は、ご飯をザルに入れて丁寧に洗い、すっきりしたおじやを作ってくれた。母親の影響なのだろう。良い味出していた。

 一通り、覚えた仕事を手伝ってもらった。三人とも、フットワークが軽い。

 えの茂吉に、牛引きをしてもらった。
 自分の体重の10倍近い牛を、果たして引けるのかと不安がっていたけど、白64みつよは意外に大人しいのだ。
 でも、大きな牛を引くには、それなりにコツがいる。時々引っ張られたりしながらも、二人で協力して何とかロープを離さずに乗り切ってくれた。

 滑走路を横断しようと、左右の安全確認をしたら、滑走路脇の雑草地に、牛が2頭いた。
「脱走だ!」
 見たところ、黒島崎放牧地の牛なので、飛行場との境界に有る金網が、朽ち果てたのだろう。バラ線を使って、補修しなければならない。
 とりあえず、大浦放牧地に追い込まなければ・・・。人では三人いるし、引いている牛に着いてきてくれないかと思ったが、微妙に進路がズレ、第一回目の挑戦は失敗した。
 二回目は、みつよを置いて行った。追ってみると、白28カズエは、警戒心が少ない。フェンス際に追い寄せて、鼻輪をつかんで捕まえた。この牛をおとりに、のえと茂吉に追ってもらって、ようやく追い込むことに成功した。

 モトツボに、また種付けをした。そろそろ着いてくれないと、出荷を考えなければならなくなるよ!

 昼飯は、ハマボウフウツワブキの天ぷら入りうどんだった。
 まずは、みんなで採集し、ツワブキの皮をむいて、天ぷらを揚げる。
「これやばいよ!」
何かと思って見てみたら、えのが嬉しそうにつまみ食いをしていた。みんな一斉につまみ始め、ふんわり軽い風味を楽しんだ。
 小食だと言っていたくせに、みんな凄い勢いで食べ、俺は期待したほど食べられなかった。

 乗馬をした。
 ちゃんと乗れるようになりたいと、要望が有ったので、まず、合図の出し方をレクチャーしてから、小さく左右一回転してもらった。これは、三人とも出来たので、外周を俺が歩き、後ろを着いてこさせながら、時々巻き乗りをしてもう。歩く振動に慣れつつ、馬に指示を出してうごいてもらうのだ。
 ポパイは、俺が走ると早足で着いてくる。たぶん、その光景は滑稽だと思うが、走る俺は大変である。俺が鈍足だから、ポパイは暴走することも無く、安全に早足の練習が出来るのだ。
 三人を乗せて体が温まった後、駆け足の練習をした。乗馬の醍醐味は、駆け足である。気持ちよさそうに走る俺とポパイを見て、自分も走れるようになりたいと言っていた。頑張れ! 俺は、ポパイの駆け足を先導できるほど早く走れないから・・・。

 今日は、温泉の日だ。
 そう思って、四人でセンターまで歩いて行った。休みだった(o_ _)o
 交代で、うちの小さな風呂に入ってもらう。
 晩飯は、ツワブキの炒め物と、ハマボウフウ入り豚しゃぶだった。
 島の商店街では、豆腐は売り切れていた。紫蘭が、俺の冷蔵庫から11.8.18と書かれた豆腐を見つけた。恐れおののくえのに対し、臭いをかいで大丈夫という俺と紫蘭。最終判断は、茂吉にゆだねられた。
 と言うことで、豆腐入りの豚しゃぶは、ハマボウフウの風味がアクセントになり、とても美味しかった。