3月競り

 酔っ払った頭で一日前の日記を書くのは、なかなか負担が大きく、このまま寝てしまおうかなという誘惑に負けそうになってしまう。

 ホテルをチェックアウトして、トランクを持って役場に向かった。バスに乗り込み、家畜市場に向かう。
 現場では、急いで赤い繋ぎに着替え、牛を捕まえロープで繋ぎ、所定の繋ぎ場に連れて行った。
 沢山の生産者や購入者が行き来する所を、興奮気味の子牛を引いて行く。走らせると、周りの人に怪我をさせるので、気を遣う。そういえば、北海道時代は、競りの規模がここの二倍以上だったせいか、毎回暴走する子牛がいて、希に走らされて怪我をした人も居た。北海道では、鼻輪を着けないため、抑えが効かないのかな?
 自分の牛をブラッシングしていたら、マリリンが合流した。馬を扱い慣れたマリリンは、牛の触り方も上手である。
 5頭全部、ブラッシングを終えた。毛の生え替わり時期なのと、子牛が下痢をしていないせいで、簡単に綺麗に磨き上げることが出来た。

 頭数が多いと、牛を引っ張る間隔狭くなり、一人だと大変である。これまでは、マリリンと二人で競り会場の直前まで牛を引いていき、会場内はマリリンが引いて、競り落とされた牛は俺が受け取って、買った人ごとに所定の場所まで引いていた。でも、間隔が狭すぎたので、マリリン一人で会場に引いてもらい、所定の場所まで連れて行ってもらった。
 競りの価格は、意外に伸びた。これは、マリリン効果なのか?それとも市場が上向いてきたのか?
 でも、もうちょっと良い牛を作らないと駄目だ。帰ったら、ほ乳ロボットのプログラムを、少し変更してみよう。

 競りの会場には、黒毛和牛消費拡大のために、焼き肉やステーキ、すき焼き用などの肉を売っている。俺が千葉から取り寄せている肉とは比較にならないけど、友達に振る舞うために購入した。
 競りの後、マリリンの車で、笠沙に移動した。
 ウノさんは、若い女性と、レンガ製のパン焼き釜の所に居た。何でも、ピザを焼くのだとか・・・。看護師を辞めたその女性は、70歳を超えるウノさんと、互角に渡り合っていた?
 完成したピザは、不完全な出来たとか、ピザソースをケチったとか、温度が低かったとか、乗っている具材は私が作ったから美味しいだとか、いろいろ意見はあったのだが、空腹の俺とマリリンには何も聞こえてはいなかった。あっという間に、平らげてしまい。後から来るはずの二人の分を残しておく知恵は回らなかった。