ソックスの調教

 一応、気になって早めに出かけたが、子牛は生まれていなかった。
 本当なら、抜け落ちたセンサーを、綺麗に洗って消毒し、昨夜のうちに挿入してプログラムを再起動させておくと、もしも生まれたときメールが来るのだが、うちの牧場は建物が離れすぎていて、ついおっくうになってしまう。スタンチョンの無い部屋だから、捕まえるのも大変だし・・・。

 冬型の気圧配置で、波が高く、船は欠航した。ちょっと困った。
 風が強く、雪が混じるが、堆肥撒きに行った。ヘヤバンドみたいはイヤウォーマー無いかな? 耳が痛い。
 湾採草地の8割以上に、厚めの堆肥撒きをしたが、堆肥舎にはまだ半分以上の堆肥が残っている。急がなきゃ!

 瀬棚の牧場には、直径15mの丸馬場があった。だから、馬の調教も、それほど難しくない。走れと合図したら、馬は壁に沿って安定して走るから、落ちないように頑張れた。でも、ここには馬場と呼べる物は無いし、丸馬場なんて・・・。
 そういう場合に使うのが、調馬策だ。長い紐をつけて、丸馬場のように丸く走らせるのだ。でも、俺はやったことが無い。
 ソックスに着けてやってみた。
 まず、一番平らな場所を探す。ちょっと落ち着いたところで、追いムチで音を軽く出してみた。ところが、ソックスは音の反対側では無く、音の側に逃げ、立ち上がろうとした。失敗。
 お尻を、ムチで触ってみた。全然反応無い。ちょっと突いてみた。変な顔をするが、期待した方向に動かない。ムチは、叩く物ではなく、合図する道具だと俺は理解している。でも、動かないぞ!
 従業員さんにまたがってもらい、足で腹を蹴って前に進ませようとした。一昨日からソックスに乗って、その合図をすると、前に進んでいたし・・・。でも、腹を蹴っても、後ろに進んだり俺から遠ざかろうとしたり・・・前には進まない。

 調馬策を断念し、やはり俺が乗って見る。脚の合図で、渋々前に歩き始める。もうちょっと強くしたら、速歩になった。でも、蛇行する。それを、手綱や脚で修正しながら、できるだけまっすぐ安定した速度で進ませる。曲がるのも、一応曲がれる。
 途中から、ポパイに先導してもらい、後ろを速歩でついて回る。ちょっと楽である。丸馬場や、調馬策に比べたら、コントロールすることは多いが、速度が安定するのは楽である。