帰島 鼻紋取り

 昨日は、一睡も出来なかったのだけど、今日はぐっすり眠れて快適な目覚めだった。外に出てみたら、路面が濡れていて、時々小雨が降っていた。でも、傘を差すほどでは無かった。
 お気に入りのカフェに行くか、モスバーガーに行くか迷ったが、どうせ土産用に買う必要があったので、モスバーガーに直行。モーニングセットと、土産用を注文した。
 荷物が軽かったので、港へは歩いて行った。途中、知り合いの人が、モスバーガーに辛いヤツを売っているかと聞かれ、俺はサウザン野菜とか照り焼きチキンバーガーとか、いつも決まった物しか買わないので、他のメニューに全く目が行かないことに気がついた。意外に保守的である。

 そういえば、学生の頃、俺は駆け抜ける旅しかしたことが無かった。オフロードバイクに乗り、一日約500km走る中に、どれだけ林道を通るかと言うことばかり考えていたっけ。
 海や山に遊びに行くようになってから、あちらこちらを見て回るより、自分が本当に好きな場所(ポイント)を、徹底的に知る方が楽しいと思うようになった。たとえば、○○島の××岩のポイントには、いつ行ってもメータークラスのスズキがいるとか、△△海岸を沖に向かって泳ぐと、見慣れた大きな岩が沈んでいて、水深約8mの岩の下に隙間があって、そこには必ず50cmオーバーのイシダイが、俺を待っているとか・・・。

 表面をさらっと見るだけの旅より、一つのポイントを細部まで知り尽くす方が、楽しみの深さが違う。そんな事を知ってから、いろいろな物に対する接し方や考え方が、大きく変わっていったような気がする。
 ニュージーランドに語学研修と称して、3ヶ月いたときも、毎週コロマンデル半島に中古のプレリュードで行くのだが、地図を凝視して風景を思い浮かべ、狙ったポイントに行く。現場が、俺のイメージしたとおりの場所だと、そこはパラダイスだった。そういう場所を何カ所か確保したら、あとはそのポイントを順に回るだけで、簡単に獲物にありつけたし、楽しかった。
 知らない新しい場所が、必ずしも楽しい場所とは限らないと、学習してしまったのだ。冒険心や開拓精神が無くなった訳では無いと思うけど、ちょっと保守的になったのかな? ってちょっと驚いた。

 港に行ったら、今日は条件付き航海で、硫黄島には泊まらない可能性があるらしい。硫黄島港は、南の強風に弱く、接岸時に風に流されて、岸壁に打ち付けられることもあるらしい。
 だからと言って、船に乗らないわけには行かない。もし、硫黄島を素通りした場合、となりの黒島に上陸して、どこか泊まる場所を見つけ、翌朝引き返す船に乗って帰れば良い。今まで、硫黄島以外の島に上陸したことは無い。もし硫黄島を抜港したら、黒島の牛飼いさんを見て回りたいなぁ・・・と考えていた。
 錦江湾を出ると、船が揺れるので、俺はいつも寝ている。竹島について、外を見たら、崖の上の竹が、大きく揺れていた。かなり吹いている。風速18m/sと言う声も聞こえてくる。たしか、10m/sを超えたら、硫黄島には入港しないはず。黒島上陸後の手配を始めるが、竹島を出港したら船は大揺れだ。さっさと寝る。
 ところが、船足が遅くなり、入港を知らせる汽笛が鳴った。
「入港するんだ!」
皆、驚きを隠せない。大学の先生が、硫黄島で講演する予定なので、頑張っているのだろうという意見。なるほど〜〜〜。
 港で見ていた人も、風の強さや、船の傾きを見て、驚いていたそうだ。残念ながら、黒島見学は次回に延期だ。

 今日は、子牛登録のために、鼻紋を取る作業があった。子牛を俺が抑えて、鼻に墨を塗り紙に鼻の模様を写す。糖蜜で懐かせているから、どの子牛も驚くほど大人しく、簡単に捕まって鼻紋を取らせてくれた。嬉しいなぁ♪