苦手なこと

 基本的に、人間関係は苦手である。
 硫黄島の人の中に入っていくのは、日中牧場に行きっぱなしの俺にとっては、至難の業である。
膝が悪いから、皆さんのレクレーションであるバレーボールにも参加できないし、ジャンベにも出ていない。酒も強くないのを知られており、誘われることは無くなった。あまり接点が無いから、なんと声をかけて良いのか、解らないと言う声も聞いたことがある。
 本当は、あまり飲めないけど、酒の席は嫌いでは無いし、出来ればいろいろ話もしたいのだけど、道行く奥様方は、俺とすれ違うとき目を合わせずに会釈して行かれる。ちょっと寂しい。

 硫黄島で生活するのに、肉はお肉屋さんの友人から買っているけど、野菜などは島のお店で買い、魚も漁師さんから新鮮な物を直接買っている。稼いだお金を、出来るだけ地元で使うことで、恩返ししているつもりだ。一人暮らしなので、食材が少なく栄養が偏り気味になるのは、仕方が無い。
 船が入港した直後にお店に行くと、地元の高齢者の方が、食材を求めて集まっておられる。若い人は、生協で頼めるけど、そういうのが苦手な人は、お店だけが頼りである。俺も牛乳が売り切れる前に買いに行ったら、
「買い出しですか?」
と、顔見知りの方に、声をかけられた。ハイとし返事して、ニッコリするしか出来なかったが、それを見ていた他のご婦人が、
「あんた、勇気がある。若い男(俺のことらしい)に、声をかけるなんて・・・(以下、判読不明)」
自分も声をかけてみたいけど、俺がどんな男かよくわからないから、怖いらしい。俺も、人見知りなんて言っていないで、もっと積極的に声をかけるようにしないと駄目かな?