乗馬

 鹿児島に来たとき、必要物資の買い付けも、大事な仕事の一つだ。
 レンタカーを借りて、ホームセンターに行く。買い物だけだったら、荷物を運ぶときだけタクシーを使う方が安上がりだが、一日は長いのだ。
 犬の餌を20kg。猫の餌を6kg。人間の餌を・・・。それを、大きな箱に詰めて、車に積み込み、港に運んだ。コンテナに入れてもらうと、安い料金で島に送れるのだ。滞在用の荷物の他に、約30kgの買い物を運ぶのは無理なので、これはありがたい。

 手続きを済ませたら、馬事公苑に向かった。片側三車線の産業道路は、とても車が多かった。月末だからかな?
 着いたのは、11時半だったが、ちょうどお昼に行くところだったので、照國神社宮司さんを定年退職された方で、ヤブサメの達人の方の車で、蕎麦屋に行った。
 日本には、ヤブサメの流派が二つあり、その一つの流派の指導的立場の人らしい。
 失踪する馬上で体を安定させ、的を射貫く技術は、尋常ではない。練習を見たが、数百年物(?)の馬具を着け、走るサラブレッドの上で手綱を放して立ち上がっておられた。以前は日本の馬だったのだから、体格も振動も大きなサラブレッドは、やりにくいと思うのだけど・・・。
 実は、ブリティッシュな乗馬はやったことがない。でも、せっかくすばらしい指導技術を持った友人ができたので、俺も乗ってみたいと思った。
 ビッグマンという馬に乗った。
 脚の合図に即応して、すぐに駆け出すこともなく、騎乗者の技術を推察しながら、ぼちぼち軽速歩になってくれた。 
 俺のポパイは、初心者には最高の馬で、反動も少なく気持ちも安定している。そんな馬を持っていながら、年に数回しか乗らない俺は、ポスティングトロット(タンタンという単調な反動を、二拍子の一拍をあぶみ立ちして反動を抜く技術)が大の苦手で、座ったまま反動を抜いていた。(反動が少ないから、ポスティングをする必要がなかった)
 でも、ブリティッシュの鞍で、座ったままの反動吸収は、今の俺の技術ではできなかった。仕方なく、ポスティングトロットで反動吸収する。と言っても、言葉で説明されただけで、ちゃんとした指導を受けたこともなく、やり方が合っているのか知るよしもない。とりあえず、やってみた。二拍子のポスティングトロットでも、ときどきタイミングを外して、バランスを崩すこともあるし、尻をぶつけることもある。尻なら良いが、玉をぶつけることもあった。
 ブリティッシュの鞍は、とても簡素にできている。あぶみを踏ん張ると、あぶみを吊す革紐にふくらはぎの皮膚が挟まり、かなり痛い。俺の乗り方が悪いのだろうか?さらに、左回転で軽速歩をしていると、ビックマンは円の内側に入り込んでくる。外手綱を引くと、顔が外を向いてしまう。
 教えを請うた。
 ふくらはぎが痛いのは、ブーツを履いてないからで、悪いことではない。ウエスタンの鞍(乗り方)と違い、ブリティッシュでは座ったままの反動吸収は難しいから、三拍子の反動抜きを練習するように言われた。ビックマンの操作については、内側から押し手綱の手法をすると言われた。
 自分なりに、考えてやってみた。
 でも、リズム感が無いから、三拍子は出来ていなかった。押し手綱は、功を奏した。
 駆け足にしたとき、外足で合図を出しても、カウンターキャンターになってしまう事もあったが、途中で修正することが出来た。
 でも、もっと練習しよう!

 練習が終わって、指導員のT君に、マリリンが離れた時を見計らって、玉を打った話をしたら、無神経なT君はマリリンが帰ってきてからも、大きな声で玉を打つのは・・・と話し続け、俺を辟易させた。彼も、俺同様KYに違いない。