毎日、大運動会!

 牛舎に行くと、湾放牧地に居るはずのみずほが出迎えてくれた。昨夕、せっかくしげよを入れてやったのだが、モトツボクミコはみずほを近づけないで、しげよを独占していた。脱走した場所には、バラ線に毛がこびりついていてすぐにわかった。支柱を足して、補修しておいた。
「みーちゃんは、もう出せないね。可愛がりすぎたから、ここが気に入っちゃったんだよね!」
牛舎に置いておきたいのは、従業員さんの方らしい。

 いじめっ子の青16ふくしげは、同室の牛をしつこく虐める。そのふくしげは、自分より強いひかりと一緒になったら、とても卑屈になってエサ箱に近づくことさえ出来ない。たぶん、一日何も食べていなさそうだったので、二人一緒に灯台下放牧地に移動させた。広いから、大丈夫でしょう。

 人口哺乳を二週間した雪絵太郎と潮次郎を、哺乳ロボットデビューさせた。空のほ乳瓶や、人差し指をくわえさせて、牛舎間を移動させ、ロボットの吸い口まで連れて行って、ミルクを飲ませる。この二頭は、飲み終えたら俺の回りにまとわりつき、エサを口の中に入れてくれとせがむから、片時も気を抜くことが出来ない。ぼぉっとしていると、股間に激しい一撃を食らうのだ。三回は教えたけど、覚えてくれたかな? 
 久美太郎と茂福太郎を、ロボット小屋卒業で電柱牛舎に連れて行った。この二頭は糖蜜液では誘われないので、首にロープをかけ、お尻を押しながら目的地まで歩かせる。たどり着いたところで、ブラッシングして体を綺麗にして、抗生剤を注射する。
 となりの部屋のみそら等、数頭をロープをかけずにブラッシングした。
 頭数の少なかった北海道時代は、俺の子牛はブラッシングされるのが好きな子が多かった。妻の看病でゆとりが無くなるまでは、ブラシを持って部屋に入ると、我先にブラッシングしてもらおうと、殺到していた。硫黄島に来て、規模が大きくなったからもうあのような親密な関係は難しいかと思ったが、やっぱり手をかけて懐かせた方が、良い牛が出来ると思うんだ。

 となりの牧場から連絡があり、牛が脱走していると・・・。みずほと一緒に、ハナコも脱走したけど、途中ではぐれたらしい。バラ線と竹藪の狭い隙間にいて、捕まえたり連れ帰ったりするのに、苦労した。

 放牧地から、臨月の牛を連れ帰る。今日は、白28番かずえと緑12番しげこだ。
 かずえは、大浦からの道、ずっっっと力を込めて引かないと、動かなかった。後ろから押しても、動かないんだ。こういうことをしているから、運動会での得意競技が綱引きになってしまうのだ。