ちゃぶ台返し

 昨日、潮次郎を舐めたひかりは、すっかり母性本能を目覚めさせてしまい、母親のうしおから潮次郎を奪い取った感がある。さすがに、お腹が空くと母親の所に行って飲んでいるようだが、それ以外では母親が潮次郎に近寄るのを妨害しているようだ。自分の子供が生まれたら、どうするのだろう?
 これまでずっと、カテーテルでミルクを飲ませてきた登次郎だが、今朝初めて、ほ乳瓶から自力で2リットル全部のミルクを飲めた。すっかり元気になった登次郎は、部屋の中でもぴょんぴょん跳ねていた。良かった。やっと子牛らしくなった。

 仕事が貯まっていると言っていたが、俺なりに段階的に挑戦してきたつもりだが、遅々として進んでいない。
 たとえば、妊娠鑑定が取れた育成牛のみずほを、湾放牧地に出すという行動だ。
 これをするためには、湾放牧地の育成牛たちの除角をしなければならない。
 そのためには、連動スタンチョンに慣らし、捕まえやすくしなければならない。
 その前に、適正な高さの飼槽を取り付けなければならない。
 その前に、飼槽を用意しなければならない。
 等と、いろいろ準備があるために、なかなか着手できないでいた。今日エサ箱を一つ手に入れたので、あらかじめ持っていたもう一つも持って、現場に向かった。先に、邪魔な竹藪を刈り払い、飼槽を置いて高さ調整をした。
 作業をしていると、放牧中の牛が集まってきた。なぜか、となりのユリも遊びに来ていた。刈り払ったササを置いてやると、ユリは美味しそうに食べていたのに、うちの牛たちは見向きもしなかった。湾放牧地は、若牛専用に使っているから、エサが豊富なのだ。ユリも、遊びに来るのは良いのだけど、柵を壊したりうちの牛を連れ帰るのは、もう止めて欲しいなぁ。
 明日から、スタンチョン調教や除角の事を考えたいのだが、天気が悪そうだ。でも、一歩進んだ。

 電柱牛舎の糞出しをした。中に入ると、子牛が作業している俺に迫ってきて、作業するのにとても邪魔である。
 作業していたら、となりの壱太郎とみそらペアの部屋で、水の入れ物をひっくり返す音が聞こえた。特に、壱太郎がやっているのだろうか? 毎日のように、水桶をひっくり返して遊んでいる。楽しいのかな?