散策


 そういえば、昨夜のマリリンはとても具合が悪そうだったので、肩や首、背中をマッサージしてみた。
 俺はこれでも、マッサージで飯を食っていたことがある(冗談)。貧乏教師時代、近所の喫茶店のママに頼まれ、岩のように堅い体をマッサージする代わりに、カレーやビーフシチューを食べさせてもらっていた。貧乏なのに、スキーや山登りに行くガソリン代を捻出したかった俺にとって、あれはありがたかったなぁ。今、どうしているのかな?
 それに比べたら、マリリンさんのコリは、わりとほぐれやすかった。うなっているマリリンを見て、ウノさんはあきれていた。
 今朝メールが来て、あまりもみ返しも無く、とても楽だそうだ。誰かに肩をもんで欲しい人は、黙ってもまれるのでは無く、気持ちが良いことをちゃんと伝えると、きっと一生懸命もんでくれると思うよ♪
 未明に目覚めたが、ウノさんが起きた音が聞こえるまで、布団の中でゴロゴロして過ごした。
 朝食をいただいた後、20歳も年の離れたウノさんと二人で、温泉に出かけた。朝風呂を浴びてゆったりしたら、笠沙周辺のドライブをした。

まずは、坊津の華という美味しい塩を買いに行った。
海水を入れた大きな釜を、廃材の薪で一週間炊いて、大粒の味わいのある塩を作る。俺が行ったとき、優しくて愛嬌のある奥さんが、モウモウたる煙と湯気の中で、忙しく働いておられた。働くのが好きで、釜を焚いたり畑をしたり接客したり・・・。ダンディーなウノさんの友達ということもあるかもしれないが、丁寧に接客していただき、俺が行った『人間が燻製になりそうですね?』といういい加減な言葉にも、真面目に対応されていて、この煙で燻製を作ったら良いかもとか、ウノさんも燻製釜を作って美味しい燻製を添えて料理の単価を上げたらどうだとか、話が面白く、何でも積極的に挑戦される姿勢が、とても羨ましかった。
「ウノさん、さらって帰ったら・・・。」
 俺やウノさんの仕事は、一人でするのはなかなか辛い。こんな奥さんがいたら、仕事が今よりずっと楽しくなり、できる仕事が何倍にも広がるだろうと思った。残念ながら、人妻だけど・・・。
 次に、海に面したレストランに行った。ここも、ウノさんの友達で、姉弟で経営しておられた。お客は、ほとんど奥様方ばかりとか・・・。俺たちの後ろにも、3人組の女性が座っておられ、楽しそうな会話が聞こえてきた。その中に、コクワとかサルナシという単語があったので、思わず耳をそばだててしまった。
 コクワは、キウイの原種で、ここで食べたコクワは、まさにベビーキウイそのものだった。北海道でも、沢山のコクワを採ってきて、ジャムにしていたのだが、あちらのコクワは皮がとても薄くてそのままジャムにできたのだが、ここのコクワは皮が固く、邪魔になりそうだった。種を取るために、熟した実を二つもらった。料理もケーキも美味しい店だった。 
 レストランの人の紹介で、玉川学園大学の農場に行った。一人で留守番していた若き研究者が、飛び込みでやって来た俺たちのために、ハウスを廻って生えている植物一種一種の説明を、丁寧にしてくれた。マンゴーやパイナップル、パパイヤ等は、ビニールハウスがあれば加温しなくても育つらしい。クジャクを避ける意味からも、やはりハウスが欲しいなぁ。パッションフルーツの枝を、挿し木用にいただいたが、また枯らして馬鹿にされるかな?
 馬事公苑に行き、マリリンたちと合流して、谷山のリサイクルショップに行った。
 ウノさんが、レストランの入口に音楽を流し、営業中であることを知らせる為のコンポを買うのが、主たる目的だった。でも、こういう所って、意外に面白い物だ。いろんな物が、置いてあった。見た感じ、未使用品が多かった。
 D君は、テントやコッヘル、ストーブなどの、キャンプ用品を探していたが、そちら方面はこだわりがいろいろ影響するので、専門店に行った方が納得いく物が見つかるはずだ。マリリンは、デロンギエスプレッソマシンを狙っていた。俺は、D君と乗馬用ブーツを探した。甲高な俺の足は、おしゃれなフォルムのブーツには入らない。やっと入るブーツがあったが、中古なのにべらぼうに高かったので、今回は止めにした。
 四人で、ピソリーノに行った。イタリア料理食べ放題で、パスタやピザの他、サラダや唐揚げ、コロッケ、ビーフンなどを食べながら、談笑した。さすが、超一流の競技選手であるD君は、とてもよく食べた。