脱走対策

 牛舎に行ったら、荒らされた跡があった。姿は無いが、脱走牛の仕業に違いない。
 犯人を捜したら、イタリアンライグラスの畑に、三頭脱走していた。イタリアンライグラスは、とても嗜好性が高い牧草で、ここでエサ袋を振っても、牛は真面目に着いてこない。俺は、犬たちを連れて牛の背後に回り、共同して追い込んだ。ゴロウもカイトも、指示通りに上手く追ってくれた。
 主犯格の白47まさよは、小屋下放牧地に移動させた。繰り返す脱走牛は、場所替えすると直ったりする。

 今日も、やることがいっぱいで、とうてい全部はやりきれなかった。
 やることリスト
1.灯台下放牧地の柵を修理して、脱走できなくする。
2.出荷牛の削蹄。
3.去勢手術。
4.除角、7頭。
5.湾放牧地にいる育成牛を、連動スタンチョン調教する。
 俺が競りに行っているとき、脱走されると仕事にならないから、脱走対策が最優先だった。
 バラ線とワイヤーカッターを持って、柵を点検して回った。何カ所か怪しい箇所があり、一つ一つ補修していった。一カ所、明らかに脱走箇所と解る場所もあった。ここを修理し、まさよを移動させておけば、当分大丈夫だと思う。

 見回りをして、モトツボにシダーという器具を入れた。大浦の牛は、たいてい良い体格をしていたのだが、赤5ゆきふくのお腹が凹んでいたので、牧草不足の恐れがあると判断して、ロールを持ってきてほぐしてやった。

 削蹄をした。
 ロープを持って部屋に入ると、人懐っこい静四郎が撫でてもらおうとやってきた。すぐにつかまるヤツは後回しでも大丈夫だ。つなみを捕まえ、もくしを着けて枠場に引いていった。簡単では無かった。引いていくだけで30分もかかり、俺は激しく体力を消耗した。
 枠場に入れてからも、転倒の恐れがあったので、腹の下にロープを張り巡らせておいた。削蹄していると、突然暴れだし、張ったロープの上でひっくり返ってくれた。ロープを張っていなかったら、怪我をさせてしまったところだ。
 中腰の姿勢で削蹄していると、腰が凝り固まってしまう。
 午後から二頭やったが、こちらは大人しく削蹄させてくれた。特に、静四郎は協力的だった。

 3番以降は、後日だな。