角切り二日目

 いつものように作業を始めたら、堆肥小屋に一番近い子牛部屋の中に、ローズがいた。うずたかく積まれた堆肥の上から、飛び降りてきたらしい。しかも、、境界の柵は、留め具が朽ち果てていたから、ローズの力だと動いてしまう。別に悪さはしないが、子牛たちは大騒ぎだ。餌を食べるどころでは無い。
 ということで、ローズを堆肥小屋に戻さなければならない。エサで誘ってみたら、一応着いてくるのだけれど、出口にある溝の金網が怖くて、通れなかった。
 子供の頃、呼んだら着いてくるように躾けてテレビに映ったこともあるけど、恐怖心があると使い物にはならない。引き綱調教をすれば、ローズの知能なら十分実用出来たと思うけど、あの頃は全くゆとりが無かったし・・・。
 仕方なく、電池の入っていない電気ムチを持ってきて、後ろから追い立てて堆肥舎まで帰した。

 昨日手術した2頭は、俺を見ても特に怖がらなかった。酩酊状態だったから、俺のことを認識できていなかったようだ。一応、俺の目的は果たせていた。獣医師に電話して、薬の量について再指示を受ける。
 すぐに手術に入りたかったが、二月市場に出荷する子牛の申し込みを、まだしていなかった。鹿児島のこの気の早い締め切りに、今だ慣れていない俺。
 3.5mlの薬を静脈注射した。酩酊状態になるのは、さらに早かった。だが、昏睡はしない。こういうモノなのかな? 今度は紐で止血して、さっさと除角した。俺は、時間がかかるワイヤーソーでは無く、パイプカッターを使う。切断面が綺麗だが、成長して太くなっていると、根元ギリギリには切れなくなるという欠点がある。今日の2頭は大丈夫だった。 
 コトブキは、うずくまっている間に、さくっと切ることが出来たのだが、センは引っ張っても動かず、枠場に入らなかった。そういえば、この牛は引き牛調教をしていなかった。顔を固定して静脈注射しようとしたけど、針を刺そうとすると、激しく頭を振るから出来なかった。明日、引き牛調教からはじめないとダメかな?