朝が辛いのだ。20分寝坊したため、水道ポンプのスイッチを入れるのが遅れ、中間ポンプは空転し、エアを噛んだ。牧場に上がっても、水は一滴も上がってこない。中間ポンプ小屋に行ったら、通常1を指しているメーターが、0.75を指していた。たった25%出力が落ちただけで、全く上がらないモノなのだろうか? 手動に切り替え、水を上げる。
 朝牛舎を終えてから、昨日逃げられたオリヒメを捕まえに行った。
 基本的には、湾放牧地に見回りに行き、餌を与える声を聞いて近寄ってきたオリヒメを、柵を空けた部分から追い込む作戦だ。二人いると、いろんな作業が可能になる。俺は牧場犬係だ。犬のように、牛の逃げる先回りして、目的地に追い込む。
 実は、カイトが来る前のゴロウは、立派な牧場犬だった。俺の言葉を理解し、行け〜! 止まれ〜! こっち〜! これだけで、広大な採草地に脱走したよその牛を、数キロ離れた所まで追い込んだこともある。でも、カイトが来てからは、気が散って仕事に集中できなくなってしまった。それはそれで、俺にとって救い多きことだけどね。
 無事に追い込み、捕獲した。簡単には引っ張れないので、軽トラに結びつけ、俺が歩いて引っ張っているふりをした。引っ張られて歩くという動作は、学習によって身につくモノなのだ。
 連れ帰ったオリヒメには、ビタミン剤を飲ませて、みずほと同室に入れた。角が伸びているオリヒメは、気の良いみずほを追いやった。でも、まだ慣れていないオリヒメは、餌場に人が居ると食べることが出来ない。だんだん慣らしていこう!
 電柱牛舎の糞出しをして、哺乳ロボットを卒業したあめり、まどんな、雄幸太郎、垂乳太郎を、電柱牛舎に移動させた。相変わらず、移動はほ乳瓶に入れた糖蜜希釈湯で、誘導した。力を使わず、楽〜に移動できた。ついでに、周囲の子牛たちにも糖蜜を飲ませた。元気を出し、食欲を増す効果があると、俺は信じている。人懐っこくなるし・・・。
 平成9年生まれの黄色38たかこは、昨年1月から種がつかない。秋には、アンピシリンで子宮内消毒をしていて、ビタミンも飲ませ、良い発情も来るのだけど留まらない。やっぱり、更新するしか無いのかな?彼女は、硫黄島に転入してきたばかりのころ、放牧地で生まれた子牛を、離乳のために連れ帰ろうとした俺を、何度も突き倒し、踏みつけた猛者だ。メガネは割られ、あばらにヒビが入ったが、その後種付けをしたし、とても仲良くなっていた。残念だけど・・・