鼻輪

 船は、欠航しなかった。島民の行動は、船の運航状況に合わせて営まれる。俺も、船が出たことで、それに会わせて行動を決めた。
 残りの二番草を刈り取ろうと思っていたが、明日車検のユニックを鹿児島に持って行くことになったし、23日は天気が崩れそうだから、延期した。代わりに、子牛の鼻輪付けとブラッシングをした。
 ロープを持って部屋に入ると、子牛は駆け寄ってきて、自分からロープの輪っかに頭を入れた。罪悪感に苛まれつつ、柵に縛りおもて(もくし)を着け、鼻輪を着けた。きっと、裏切り者! と思ったろうに、放してやるとまた寄ってくる。
 他の子牛も、簡単にロープがけできるが、簡単にしばれるとは限らない。さらに、引かれて素直に動くとも限らない。渾身の力を込めても引けない子牛は、間欠的に引いたり、しばらく柵に繋いでおいたり・・・。でも、狂ったように暴れる子牛は、いなくなった。とりあえず、出荷牛に鼻輪を着けてから、削蹄をした。今日は、ひっくり返る子牛は居なかった。
 大型扇風機のおかげで、床は驚くほど乾燥してきた。扇風機のつるす角度で、あまり乾いていない所にも、風が当たるように調整した。吊す作用をしてくれた三人組が来てくれなかったら、たぶんまだ動いていないと思う。ありがとう!