油断大敵

 空気がちょっと冷たく感じる、爽やかな朝だった。牧場に登ると、風が強かった。
 濡れた牧草を乾かすために、テッターをかけに行った。湿った牧草は、風が強くても飛ばないから、強風でもテッターをかけられるのだ。
 思いテッターレーキを、油圧で開こうとしたら、辺り一面油煙が舞った。今度は、この機械の油圧ホースにも穴が空いたのだ。いずれの機械も、いろんな所に寿命が来ているから、仕方ない。とりあえずテッターをかけ、開いたままでは持ち帰れないから、外して草地に置いてきた。
 昨日使った鎮圧ローラーを、倉庫にしまう。牽引する鉄製の棒が、錆びて穴が空いていた。折れるのは、時間の問題だ。泥を落として、油を差すしか、対策を知らない。
 ステンレス製のブロードキャスターは、流水で肥料の粉を洗い落とし、未使用のエンジンオイルを振りかけ、タオルで油膜を作った。硫黄島の亜硫酸ガスをなめてはいけない。屋根の下に保管している、ステンレス製のブロードキャスターは、たった一年で赤く変色し、丸い錆模様が出来ていた。
 油も、いずれは乾いてしまうが、時々注油することで、錆の進行を抑えようという作戦だ。最近の俺は、オイルピッチャーを片手に、農機やユニックの回りをウロチョロして、油を差して回っている。そうしないと、信じられない速さで、錆が回ってしまうのだ。
 こういう作業は、意外に時間がかかり、せっかちな俺にはとても焦れったい。霧吹きで、油を吹き付けられたら良いのだけど・・・。

 おたけの段取りメールが来たのは、12日の午前一時ころだ。グラフを確認したが、確かに出産前の温度低下曲線にぴったり一致する。だが、昨夜は生まれるかもと思っていたのに、駆けつけ通報が来なかった。そして、今日の日中も注意して見ていたが、全然生まれてこない。体温グラフを見たら、平常値に戻っている。どうなっているのかな?