助産の応援に・・・

 獣医さんが来て妊娠鑑定をしてもらうために、ちょっと早めに作業開始。見回りに行き、今日は親牛を連動スタンチョンに繋いだままにする。
 獣医さんも早めに来てくれたので、母牛繋留は従業員さんに任せ、俺は獣医さんと妊娠鑑定に回った。いつもは三人でするので、俺が牛の尻を押さえる係になり、蹴られるとしたら俺だけなのだが、二人だと俺は牛の番号を読み上げ、鼻を抑える係になる。すると、鑑定中の牛は蹴らないのだが、隣の牛に蹴られてしまうのだ。数発蹴られて、痛そうだった。ごめんなさい。
 結果的には、6頭の母牛の妊娠が解った。
 繁殖障害の牛には、イージーブリードやホルモン注射などの処置をした後、ビタミン剤を注射した。昨夕スタンディングしていた白74番は、ロープで捕まえ、柵に縛り付けて、種付けをした。早く連動スタンチョンを取り付けて、枠場も作らなければ・・・。
 島の中学生が、職場見学会の下見に来た。さらっと美味しいところだけの見学会では無く、仕事で苦労することを教えたいとのことだったので、基本的な仕事の流れにつきあってもらうことにした。だいたいのスケジュールや、持ち物、牧場が目指す牛とはどんなモノか等、説明した。

 宮次郎は、昨夜哺乳ロボット小屋にデビューさせ、ロボットからの飲み方を教えたのだけれど、意外に覚えが悪く、頑固だった。

 晩飯を作って食おうとしたら、電話が鳴った。
「お産を手伝って欲しい。」
すぐに作業服に着替え、牛舎にある産科チェーンと滑車を持って行った。
 母牛は、脱柵名人のゆりこ(百合茂)だった。陣痛がひどいらしく、苦しんでいた。三人がかりで引っ張っても、ビクともしないらしい。
 急いで、子牛の前足に産科チェーンをかけ、柱に支点を取ってもらい、滑車を取り付けた。八人力の助産用滑車は、引いた力の八倍でひくことが出来る。とても難産で、簡単には出なかった。あまり勢いよく出すと、母体や子牛に障害を与えそうだ。ゆっくりすぎても、圧迫死させるので、それぞれの様子を見ながら、慎重にひっぱっりだした。
 出てきたのは、とても大きな雄(金幸福)だった。逆さ吊りしようとしたが、一人では持ち上がらなかった。出ないはずだ。産科チェーンが無かったら、たぶん死なせてしまっただろう。大きな子牛が生まれると、いずれ大きな利益を生むのだけれど、大きなリスクも伴うのだ。役に立てて良かった。