11月競り

 朝5時に起きて、ゆっくり朝食を食べた。
 気の弱い俺は、待ち合わせ時間ぎりぎりに行くのが、好きでは無い。40分以上前に着いたが、当然誰も三島の人は待っていなかった。役場に入り、時間まで研修生や移住者の受け入れについて、話をした。こういうとき、俺はハッキリものを言うが、それは現状をもっと良くしたいと真剣に考えているからなのだ。考えや良くしたいという気持ちが無かったら、何も言わない。それを、五月蠅いと取るかどうかは、相手次第だが・・・。
 バスには、三島からは俺一人しか乗らなかった。着いたら、急いで着替え、牛をつないで体重などを書いた札を着ける。そして、出場番号に従って所定の場所に繋ぎ、最終ブラッシングをする。9頭も居ると、ブラッシングも大変である。
 競りが始まった。駆け出しは、とても良さそうだった。去勢が、40万円台の前半、雌が、30万円台の前半・・・といったところでまとまっていた。
「ばらつきが少ないな!」
 最初の印象だ。午前中は、雄だけ4頭出場した。岡茂福が高い!事業団の種、茂勝栄は嘘のように安かった。北海道でも、トップを狙えるような種では無いが、中堅どころの良い牛が多いのに、去勢がメスの値段で落札されていた。事業団の種をいっぱい持って来たが、捨てた方が良さそうだ。全国的に、高い評価を受けている種も多いのに、知られていなければ買ってもらえない。
 9頭も出場させると、走り回っても一人で引っ張るのには無理がある。引っ張るのに間に合わないときのために、俺がたどり着くまで牛を引っ張ってもらう人を頼んだりした。
 牛若丸とスミレは、とても残念な結果だったが、他の牛が頑張ってくれたから、目標額よりかなり高く売れて良かった。