歌舞伎 俊寛

 従業員さんは、歌舞伎のスタッフやお客さんのための(?)食事作りや、前座として踊りに参加するため、早朝から一日中拘束されるらしい。
 研修候補生と朝牛舎をやった。こう見えて心配性の俺だが、ある程度任せることが出来た。
 配線図と、つり下がった扇風機を見比べていたが、とても簡単に出来そうだった。問題は、三相の200Vを接続する際、途中で色を取り違えていないか?だ。間違ったら、逆回転するくらいかな?瀬棚時代にシリンダーカッターを買ったときも、逆回転したっけ・・・。
 中村勘三郎さんを乗せた飛行機が来るというので、島のメインストリートで島民は待ち受けることになっていた。待っても待っても、飛行機が飛んでこない。皆、屋久島の方向を見る。
「来た!」
「あれは、カラスだよ!」
「イヤ違う。トンビだ!」
どうでも良い・・・。一時間を過ぎて、ようやく本物の飛行機が飛んできた。子供達は、何度目かのジャンベ演奏を始めた。
 でも、なかなか来ない。どうやら、集落に降りる前に、俊寛堂に行ったらしい・・・。
「・・・。」
 やっと車が来て、当人が降りてきたのだが、子供達の演奏を聴くゆとりは無かったようだ。

 午後は、歌舞伎を見るために時間調整をして、早めに家に帰り、汗を流して出かけた。舞台を見たら、観客席と同じ高さになっていた。
「見えるのだろうか?」
 柱松に火が灯り、東京からのお客さんや高齢者の後に、一般島民の席に座った。前は見えない。数人前に、体の大きな少年が座っており、その子が正座して体を伸ばすと、後ろの子供達は立ち上がらないと前が見えない。みんなが立ち上がると・・・。だからと言って、大人の俺が立ち上がって観るわけにもいくまい。大型ユンボがいたのだから、舞台を一段高くするとか、観客席はすり鉢状に傾斜を着けて、後ろからも見えるように出来たと思うのだけれど・・・。
 それでも、背景の崖をライトアップしたり、実物の船を使ったり、見所も沢山あって良かった。それに、星空がものすごく綺麗で、星が一つ流れた。