九月踊り

 昨日の夕方から、水が出なかった。朝になったら出るだろうと思っていたのだが、自動給水の水桶は、底が見えそうになっていた。サブタンクを取り付けた哺乳ロボットが、渇水しなければ良いのだが・・・。朝6時15分に中間ポンプが動くようにセットされているから、人間が6時ころに井戸のポンプのスイッチを入れないと、空回りする仕組みになっている。こういうヒューマンエラーの出やすい仕組みは、機械の寿命を縮めるのだが・・・。
 妊娠鑑定のために、獣医さんと牧場を回った。何頭か、妊娠が確認され、長期不受胎の牛には、子宮内に抗生物質を注入してもらった。
 新入りのみずほ(百合茂)が発情していたので、安福久を着けてもらった。着いたら良いなぁ。
 ゴロウが皮膚病になっていたので、デキサメサゾンを注射した。可哀想なので、人間用の細い針を使用したが、ゴロウは身動き一つせずに、大人しく注射された。北海道にいたころは、新人獣医さんが、狂犬病予防接種に回る前に、練習台として来ていたっけ・・・。
 うちの牛は、俺が不在の時は、決して発情しない。そして、俺がたまたま帰ってきた日を狙って、発情する。だから、9月の種付けは、講習会から俺が帰った日に限られる。一人で留守番し、ルーティンワークをこなすだけでも大変で、過労になってしまう状況なのだから、発情した牛を捕まえたり道具をそろえたりするのは可哀想だと、牛が気を遣ってくれているらしい。
 俺が帰った今、牛はあっちこっちで怪しい動きをしているので、なかなか目が離せない。
 午後から、ファーガソンにディスクモアを取り付けて、うまかロールの二番草を刈り取り始めた。プロの整備を受けたファーガソンは、調子が良い。調子よく刈っていたら、突然、リンチピンが抜けて機械が脱落した。瞬間で止まったから、壊れた箇所な無かった。でも、このディスクモアは、ちょっと難しいシステムで自立するようになっていて、脱落した後の取り付けは、容易ではない。作業を断念して、ルーティンワークに戻った。
 従業員さんの踊りを見に行くために、かなり頑張って作業した。でも、どうしても終わらなかった。
 途中で抜け出し、集落に降りた。最後のグループの踊りが、すでに始まっていた。神に供える踊りだから、正面は神社で、観客席は踊りを後ろから観ることになる。観客席に座ったら、芋の天ぷらをポカリスエットで流し込みながら、話しかけてくれた人に応対している間に、踊りは終わってしまった。でも、従業員さんは最後のグループに入っていたから、とりあえずちょっとは観ることが出来た。
 急いで仕事に帰って、残りの作業をした。