嵐の中のチャーター機

 未明から目が覚めていたが、船が出航するか決定する7時まで待っていた。
 船欠航の放送が入ったのは、7時15分頃だった。すぐにパイロットさんに電話して、出来るだけ早い時間に、鹿児島に戻りたいと話した。鹿児島から硫黄島に帰りたいと言っていた人たちを誘ったが、荒天に飛ぶリスクを恐れて(?)、乗ってはくれなかった。割り勘出来なくて、残念!!
 現実の天気は、雨が激しく降ったり、猛烈な風が吹き荒れたり、とても着陸できそうな雰囲気では無かった。でも、北風なら飛べると言う言葉を信じ、仕事をしながら待つ。
 本当に来てくれるかは、不安だった。10時ちょっと前、もうすぐ離陸するから・・・と電話が入るまでは・・・。急いでお金を下ろしに言った。島の人に、誰か鹿児島に行きたい人はいないかと聞いたら、こんな風の中飛ぶの?と、手を合わせて拝まれてしまった。人を誘うべき状況では無いらしい(^^ゞ
 飛行機が飛んできた。滑走路脇で見ていたが、風にあおられて不安定になりつつ、降りてきた。飛行機は、着陸が一番難しいのだ。降りたら、飛べる!
 実測で風速15m/s は、伊達では無い。駐機中の飛行機が、揺さぶられる強風だ。
 いざ離陸!!滑走路を、風に向かって走る。機体が浮かぶと共に、機は激しく揺さぶられた。複雑な気流に翻弄されつつも、高度を上げてしまえば、ぶつかるところは無いから安心なのだ。離陸後すぐに雲に入り、真っ白な世界を超えたら、一面の雲海が広がっていた。高度5500m。ところどころ盛り上がって丘のように見えるが、雲に入ると機体は揺れる。雲の中は、上昇気流があるのだ。
 レーダーの無い機体は、コンパスや高度計、機体の傾きを示す計器などと、目視で飛ぶ。ちょっとした操縦桿の操作で、たちまち上昇、降下、あるいは左右に向きを変え、まっすぐ一定の高度で飛ぶことさえ、素人には難しいのだ。
 鹿児島上空で、雲の下に降りた。空の上なのに、デコボコ道を車で飛ばしているときのように揺れるのが、不思議な感覚だった。姶良や加治木、国分の町並みを見下ろしながらの空の散歩も、もうすぐ終わりだ。
 鹿児島空港に、着陸態勢に入った。細く見えた滑走路がだんだん太く長く見え、乱気流でデコボコ飛行をしながら、機は着陸態勢に入った。2万時間(?)の飛行経験を持つベテラン機長のおかげで、何とか本土に帰ってこれた。すぐに、真っ赤なフォルクスワーゲンに乗り込み、畜産試験場まで送っていただき、午後からの実習に間に合うことが出来たのだ。ありがとうございました。