ささやき

火山灰に覆われた鹿児島を後に、湾岸の道を走る。錦江湾は、今朝も綺麗に輝いていた。
 人工授精師の講習会も、2/3を終え、そろそろ試験が迫ってきて、教室にも緊張感が漂っているような・・・。実習が出来ないから、毎日のようにテストがあるし・・・。
 今日は、鹿児島中央市場の9月競りがあり、俺の牛も5頭出場する。許されるなら、講習を休んで自分の牛を引っ張りに行きたかった。でも、今日の実習内容は、器具等の取り扱いとなっており、現場で役に立ちそうだし、休んだらどんなペナルティーがあるか解らないので、泣く泣く出席した。
 午前中は、精液を取る器具の使い方を教わった。ほぼ全員が、自分の家の牛に種付けをするだけなので、種雄牛から精液を取ることは無いと思うのだが、人工授精師の資格として、精液採集の資格が含まれるから、実習(講義)をしないわけには行かないらしい。ただ、ささやくように講義されるのは、とても辛かったのだ。
 午後からは、実際に使用する精液注入器や膣鏡が出てきて、ちょっとは眠気も醒めたが・・・。

 市場成績が、メールで送られてきた。硫黄島に来て、初めて人工ほ乳に切り替えた、武蔵と小次郎の双子や、竜之介が入る。るるや苫斗太郎は、制限ほ乳。
 結果として、平均40万円を超えた。相場が上がったことにも救われているのだが、評価されたことが嬉しかった。
 武蔵と小次郎の双子は、生まれたときに、カイト(体重15kg)くらいしか無いチビだったのに、二頭とも立派に育った。こういう喜びが、牛飼いを続ける原動力となっている。