家畜の育種
車が、火山灰で白く覆われ、前が見えない状態だった。ワイパーを動かすと、クレンザーでこすったようにフロントガラスは白く傷ついてしまう。ペットボトルに汲んだ水で、洗い流した。風向きから考えると、新燃岳からの灰かな?
今日の講義は、家畜の育種だった。
午前中は、形質の遺伝について学んだ。メンデルの法則から、質的形質の遺伝や、量的形質の遺伝、家畜改良のための掛け合わせ・・・。
この辺の話なら、理解しやすいから何とか聞くことも出来た。
問題は、弁当を食べてからの、午後の授業だ。
畜産試験場は、標高が高いので風が涼しい。だが、俺の座っている西側の席は、午後から徐々に西日が差して、尻からじわじわとあぶられる。
そこへ、種雄牛の能力を調べる検定法や、血統の話などがあったのだが、俺の脳みそは、だんだん先生の声を、日本語として認識する能力を失っていった。一番前の席なのに、声は良く聞こえているのに、ぜんぜん意味を成す言葉として聞き取れないのだ。これは辛かった。
それでも、眠らないで必死に座っていた。資格を取るためには、眠れないのだ。