修理?破壊? 夜中の出産

 ファーガソンの部品は、今日のお昼に届く。それまで待っていると、刈り倒してある牧草の収穫が遅れる。
 フォード6610に着いているブッシュカッターを外し、テッターレーキを取り付けた。このトラクターは、調整しないとたぶんまともに動かない。細部にわたってしっかりした作りで、仕組みを知らないと油圧ホースさえ取り外しが困難である。油圧ホースは解決したが、ロアリンクが適切な高さまで上がらない。このまま走ると、取り付けた機械を引きずることになる。ウウウっ、どうすれば良いのだ。
 上げ下げレバーと高さ調整レバーだけでなく、他の油圧レバーが関係していて、あれこれいじっているうちに、微妙に動ける高さになった。
 テッターもかけにくいが、使える機械があるだけ、ありがたい。
 肝心の牧草は、表面は乾いているが、青草が混じる。もう一度反転しないと、ロール出来ないかな?

 昼飯を食って、ファーガソンの部品を受け取って、牧場に向かう。使えるなら、ファーガソンの方が使い易い。
 修理を始めた。
 ゴムパツキンを挟んでも、手で締めただけでは、軽油が漏れる。
 小型のモンキーレンチで締めた。締まる締まる
パリン!
 何の前兆も無く、買ったばかりの部品は、砕け散ってしまった。調子に乗って、締めすぎたのだ。
 この段階で、刈残しを刈るのは止めて、今乾いている乾草を丸める事に専念することにした。刈り取り済みの牧草にテッターをかけ、レーキして、ロールベイラーで丸めた。
 35個できた。13個だけ、倉庫に入れた。

 夜中の一時に、駆けつけ通報が来た。先日大怪我をして治療中のメロンが、産気づいたのだ。眠気を吹っ飛ばして、牛舎に駆けつけた。
 駆けつけたとき、すでに生まれていることもあるのだが、メロンはうずくまっていた。怪我の影響もあるかもしれないが、体力のあるメロンは、自らの体力で障害を受け止め、子牛は無事に出産すると信じていた。でも、なかなか出てこない。センサーをもう一度挿入し、一旦家に帰ることも考えたが、俺の住宅は周りに家があるので、夜中に何度も車のエンジンをかけたら、近所迷惑だ。ロールの上に寝そべって、お産が進むのを待った。金魚のおかげで、今年は蚊が激減した。でも、なんか痒いような・・・。
 二次破水しても、全然出てくる気配が無いので、四時ごろから助産に入る。胎児は、正常な位置にあった。だが、蹄が大きい!雄だと思ったのだが、足首(官)はとても細い。巨大な雌か?産科テープを足首に巻きつけ、引っ張ったがびくともしない。助産用滑車を取り出す。八人力で引っ張ったが、頭がつかえて出てこない。メロンは大きな牛で、これまでも大きな子牛を生んでいるが、今回は最大級か?
 でも、八人力の滑車は伊達ではないのだ。引っかかっていた鼻先を逃がしたら、やがて子牛は出てきた。とても大きな雌だった。無事だ!!頑張ったね。
 家に帰る頃には、空は明るくなり始めていた。老骨に、徹夜は堪えるのだ。でも、俺がいるときに生まれて、良かった!