サマンサ帰る

 別れの日は、遅かれ早かれ、いつかはやってくるものだ。台風で船が出なくて、鹿児島市で足止めを食っていたときから、牧場を手伝うために来てくれていたサマンサも、とうとう帰る日が来てしまった。荷造りをしてから、牛舎に向かった。
 揚水ポンプのスイッチを入れるのが、5分ほど遅れた。中間タンクに水がたまっていたら、問題ない時間だった。そして、下のポンプより中間ポンプを5分早く切るプログラムで、中間ポンプに水がたまりやすいはずだった。でも、ポンプは空転し、エアを噛んでいた。
 手動に切り替えて水を揚げ、スイッチを切りに行ったとき、プログラムを変更して、中間ポンプの作動時間をさらに減らし、今度こそ空転させないように工夫した。ポンプの動作確認をしてから、小屋を離れた。

 三人で、牧場の見回りに行ってから、早めに午前中の仕事を終了した。サマンサには、汗を流してもらった後、従業員さんの家で昼食を食べてもらった。ロウニンアジの刺身丼を食べてもらった。

 サマンサが帰ると、夏休みが終わったという印象だなぁ。
 楽しんでもらうために、海に出かける機会が増えたし、それは俺も楽しかった。仕事も一生懸命やってくれ、動物たちとのふれあいも、自分から積極的に取り組んでくれた。
 きっと、また来てくれるかな?待ってるよ!

午後から、従業員さんにホイルローダーでユニックにロールを積む作業を挑戦してもらった。
 教える作業は、とても忍耐が要る。でも、ちゃんと教えると、俺が居ないときでも、ちゃんと出来るようになるので、結果として仕事のクオリティーが高くなる。一人で出来ることは、限られているのだ。
 ファーガソンが動かないと、牧草作業が進まない。
 でも、俺に残された時間は、限られている。今できる仕事を見つけて、やるしかない。
 フォード6600にブロードキャスターを取り付け、採草地に肥料を撒きに行った。600kg積みの俺のブロードキャスターは、頭にフロントローダーや重りが着いていないフォード6600には、荷が重すぎてフロントタイヤが上り坂で浮く。ハンドルを切っても、曲がっていかないのだ。
 それでも、ブレーキターンなどを使って騙しながら走れば、何とか使えるのだ。