見送りの日・・・

 今朝は、獣医さんが鼻紋取りに来るので、みんなそのつもりでテキパキ動いた。
 鼻紋の取り残しは、あと三頭だったが、あっちこっちに散らばっていた。
 特に気がかりだったのが、ゆたかだった。以前は、なかなか捕まらない牛で、今いる湾放牧地には、スタンチョンも無い。
 4人がかりで、捕獲作戦に入った。
 二倍の長さのロープを首にかける俺と、出入り口や柵の弱いところを守る三人。
 だが、湾放牧地では地位が高く、精神的に成長したゆたかは、抵抗も無く、あっさり確保できた。
 黄色32は、灯台下放牧地にいた。赤20は、なかなか見つからなかったが、小屋下放牧地にいた。
 それぞれの放牧地で、抵抗されながらも、無事に鼻紋を取り終えた。これで、母牛の名義変更が出来る。

 哺乳ロボット小屋の、静三郎、なおこ、キキを、電柱牛舎に引っ越しさせた。
 静三郎は、砂糖水を入れた哺乳瓶で、移動させることができた。楽なんだこれは・・・。
 なおこは、哺乳瓶に興味はあるが、何かに驚くと走り出してしまう。だから、首にロープをかけた。走り出すのを抑えたところで、哺乳瓶で進む方向を示す。引っ張らなくて済むので、とても楽である。
 キキは、哺乳瓶には興味あるけど、興奮して吸い付くことができない。結局、哺乳瓶は使わず、後ろから押してもらった。

 ついでに、哺乳ロボット小屋の敷き藁を、ボブキャットで一気にはがして、新しいロールをほぐして敷いてやった。汚い床を見て、気に病んでいるより、綺麗な床の上で喜ぶ子牛を見る方が、好きである。

 多少順不同なのだが、後輩カップルが、帰って行った。しかし、よく来てくれたなぁ。昨夜は、飲み食いしながら、ずっとしゃべっていた気がする。俺は、ちょっと変わった男だったのだが、伝説のように『○○をしていた。』と話される中には、俺の知らない新伝説が沢山あって、とても面白かった。オートバイサークルの中心メンバーとして、一生懸命遊んでいた俺は、お嬢様のようだったずんこ(別な大学から通っていた)の目には、不思議な生物に見えたのだろう。
 俺は、まだ元気だぜ!ずんこも、楽しく生きようぜ!

 ところで、サマンサもこの船に乗るはずだった。ところが、牛温恵から段取り通報メールが届いた。28時間以内に子牛が生まれる確率が、80%以上という通報だ。これまで4回も俺の牧場に通ってくれたのに、一度も出産シーンを見ていないサマンサは、是非みたいと言うことで、船に乗るのを止めてしまった。今度は、きっと見られるよ!

 夜は、従業員さんの家にお邪魔して、ご馳走になった。娘さんが、サマンサのことをとても気に入ってくれ、色々楽しそうに話をしていた。俺は、連日の飲みで、帰った途端、歯を磨くゆとりもないまま爆睡してしまった。