はるか捕獲作戦

 いつものように、ポンプのスイッチを入れたのだが、牛舎に行ってみたら水が出ない。また、不具合が起こったかと思って走ってみたが、ポンプは順調に動いていた。水が減りすぎて、俺の牧場で水が出るまでに、時間がかかっただけらしい。
 昨日丸めた牧草を入れるために、乾草庫を空けなければならない。去年収穫した牧草がまだ沢山残っていて、これを置く場所に困っている。でも、今年収穫した牧草の方が品質が良いので、これを雨ざらしに置いておくのは馬鹿である。全部外に出して、収穫したロールを中に入れるようにしようと思った途端、激しい雨が降ってきた。ああ雨ざらし・・・。
 見回りに行ったら、ハナコが脱柵して、採草地で遊んでいた。ゲートが破られていた。
 黒島崎放牧地では、ハルカは帰ってこなかった。長い紐が、藪の中で引っかかり、暴れているうちに首に食い込んで・・・?嫌な予感がよぎる。帰ってこない何頭かの牛も気にかかり、広い放牧地に捜索に出かけた。歩けど歩けど、牛の姿が見えない。奥の奥に行ったところで、牛の声が聞こえたような・・・。数頭の牛が、竹藪から出てきた。だが、ハルカは居なかった。竹藪の中に倒れているのだろうか?だが、視界の効かない広い竹藪の中を、二人で捜索するのはかなり厳しい。一旦、スタンチョン前に帰ることにした。
 果たして、ハルカが居た。長い紐の先は、わりと簡単につかむことが出来る。だが、結びつける杭が無いと、結局は振り切られてしまう。スタンチョン前広場に追い込むが、スタンチョン意外に結びつけるものが無い。直線的に逃げられたら、紐にゆとりが無いので結びつけることが出来ない。円形に逃げるような追い方をして、ようやく松の木に縛り付けることが出来た。捕まえられた後は、ハルカは大人しく馬のように上手に引かれて歩いた。引き牛訓練は、子牛の頃にかなりの時間をかけてやったのだ。でも、興奮しやすい性格は、治せなかった。牛舎の一室に入れた。
 従業員さんが、農業用猫を連れてやってきた。夏休みを家族と鹿児島で過ごすために、島を留守にするのだ。フユがいるからと言って、いつまでもデビューを先延ばしにし続けるわけにも行かない。とりあえず、牛舎ではフユは繋ぐことにした。
 サマンサは、従業員さんの分も張り切ってくれた。
 先に、しなければならない作業リストを作ってあり、それから今日の天候やコンディションに合わせて、作業を選んだ。今日は、哺乳ロボット小屋の子牛の、一斉治療だ。
 実は、鼻を垂れたり下痢をする子牛が居ても、捕まえるのが大変なので、見て見ぬふりをしてきた事を反省している。今日は、意を決して子牛一頭一頭を捕まえ、薬を飲ませ、注射をした。皆、激しく逃げ回るので、捕まえるのは容易ではなかった。子牛用のスタンチョンがあればなぁ!