ワクチン接種

 どうでも良いのだが、5時前には起きていた。6時にポンプを作動させる時間まで、ネットをして暇つぶし・・・。
 ポンプのスイッチを入れ、サマンサとレトルトカレーを食べ、牧場に向かった。従業員さんが、サマンサに仕事を教え、俺は牧草刈り取りの続きだ。ギアをさらに落とし、ゆっくりゆっくり作業した。
 そこへ、砂糖さん夫妻が、牧場見学に来た。採草地まで来てくれたので、ちょっと立ち話をした。明日は、一日ジャンベのワークショップが休みなので、一緒に海などで遊びたいらしい。実は、俺もサマンサを海に連れて行かなければと思っていたところだ。全員をずっと手を引いて行くほど体力無いが、魚やウミガメに会えるポイントくらいは、ガイドできるかな?そろそろ魚を食べたいし・・・。
 ひたすら、ゆっくりかりとりをつづけたのだ。ゆっくりでも、それ以上壊さなければ、いつかは作業が終わるものだ。機械を、テッターレーキに付け替える。刈り取りに比べ、テッター(反転作業)はとても速い。調子に乗ってやっていたら、テッターレーキのタイヤが外れた。かなりショックを受けたのだが、よく見るとタイヤキャップが外れていないから、サークリップやワッシャーは紛失していない。牛舎に帰り、工具を引っ張り出して修理した。
 そこへ、従業員さんとサマンサが現れて、出産予定の牛を、放牧地から連れ帰るから、手伝って欲しいと・・・。黒島崎放牧地にいる赤13を、スタンチョンに入ったところで確保した。これは連れて帰れる。だけど、わざわざ北海道から連れてきたはるかは、スタンチョンに入らないばかりか、捕まえようというそぶりを見ただけで、全力で走って逃げてしまう。これでは、捕まえようが無い。この子の神経質ぶりは、筋金入りである。

 今日は、お盆に向けての奉仕作業だった。俺は8時からと思っていたのだが、従業員さんが3時からだと主張するので、今すぐにやらなければならない収穫作業に専念していた。
 すると、9時頃に電話があり、ゴミ捨て場でダンプが動けなくなったから、牽引して欲しいとか・・・行ってみたら、車がいっぱい止まっていた。奉仕作業は、やっぱり8時からだったのだ。恐縮しながら、ダンプをファーガソンで牽引して救出した。
 サマンサは、教えるのが上手い従業員さんから、糞出しの指導を受けていた。
 獣医さんは3時過ぎに来るということだったので、サマンサを連れて、海を見に行った。坂本温泉は、ちょっとだけ濁っていた。大浦に行ったら、熊本大学ジャンベサークルの生徒が、遊びに来ていた。乱入したゴロウとカイトが海に飛び込むのを見て、とても喜んでくれた。綺麗なビキニのお姉さんが、ゴロウとカイトに興味を持って、話しかけてくれた。サマンサは、綺麗な海を見て、我慢できなくて服のまま飛び込んだ。なかなか、行動的である。カイトが、積極的に海で泳いでいたのが、サマンサには驚きだったようだ。
 服を軽く絞っただけで、サマンサは午後の仕事を始めた。
 餌をやったりミルクを作ったり・・・。昨日来た少年が、4時にミルクをやりに来ることになっていた。でも、待てど暮らせど来ない。
「先にやっちゃって良いですか?ミルク冷えちゃいますよ!」
「・・・もうちょっと待って・・・。」
 獣医さんがやってきたので、ワクチン接種だ。三人がかりで始めた。子牛を捕まえる俺。注射をする先生。名簿を読むサマンサ。
 ところが、そこに少年を連れた車が・・・。責任感の強いサマンサは、そちらの補助に行ってしまった・・・誰か、名簿を読んでと言ったが・・・。

 夕方、獣医さんの泊まっている民宿に、サマンサと二人で乱入した。宿には、二人分の食事も頼んであった。いつのまにか、隣のテーブルに来た国際大学大学院の理論考古学研究室の人たちと、話が始まった。博士課程の女の人が、熱く自分たちの研究について語り始めたら、サマンサが目を輝かせて話に乗っていった。
 俺は、時々、今の自分は、いい顔をしているか?と、気にしてみる。仕事やプライベートが充実している人は、顔が明るく輝いて見えるものだ。
 今日会った人は、いい顔をしていたなぁ!話が面白かった。素人の相手がわかりやすいように話せるのも、研究が楽しくて、しかもよくこなれている証拠だろう。久しぶりに、惚れ惚れするほど輝いている顔を見た。